2020年3月4日
先週金曜日2月28日にFRBが「パウエル談話」で利下げ予告した時、時期は明示しなかったが市場は3月17~18日の定例FOMCでの決定を前提に受け止めていた。
それがG7終了を待っていたかの如く3日NY時間午後12時に唐突に発表され、午後1時には15分ほどの緊急記者会見が開催された。
市場の初期反応は「歓迎の買い」でダウ平均も200超まで急騰した。
しかし15分ほどの即席会見中に潮目が変わった。株価の本格下げが始まったのだ。金は上げが加速した。
特に株売りを誘発するような発言はなかったが、折からNYで二人目の感染者が出て初の高校休校の事例も報道され、コストコの店舗内棚が空になった写真が市場には流れていた。
マーケットはFRBが定例FOMCまで2週間も待てないほど事態が切迫していると警戒感を強めた。
株売りの波のキッカケはヘッジファンド。28日の「パウエル談話」で利下げ近しと読み、株買いポジションを積み増していたので「噂で買ってニュースで売る」の常套手段で利益確定売りに走ったのだ。既に動揺していた市場では、その後機械的に売りが売りを呼ぶ展開になったのだ。債券市場で米10年債利回りが1%の大台を一時的に割り込んだことも不安感を醸成した。
そして金は1580ドル台から1640~50水準まで急騰した。金利を生まない金にとって「緊急0.5%利下げ」は強烈な買い要因だ。
記者会見のパウエル発言で筆者が気になったことは「コロナウイルス禍がいつまで続くか。」との質問に対して「誰にも分らない。」と軽く答えたことだ。まさに事実なのだが金融政策の司令塔FRB議長が緊急利下げ記者会見で発する表現ではない。市場に「暗闇で手探り」の印象を改めて強く与えてしまう。
これで残る追加利下げ機会は0.25%刻みで4回だけになったことも、改めて金融政策の限界を意識させ不安感を強める。
FRB議長も記者会見で金融政策でサプライチェーン修復は望めないことは述べており、財政政策の重要性を「管轄事項ではないがG7で合意されている。」と語った。するとマーケットは「ねじれ議会で財政出動の難しさ」を連想してしまう。スーパーチューズデー当日のことでもある。
それにしてもNY株式市場のボラティリティーは異常だ。
今週に入っても二日で1000ドル以上の変動を3回も見せつけられた。2日月曜のNY寄り付き前、時間外のダウ平均でも1000ドル幅の価格変動が生じているのだ。
3日のダウ平均は結局785ドル安であったが1000ドルまで届かず、この程度で収まった感も残るほどだ。
出来高も記録的でAIが支配して高速度取引が大量の注文を発動する実態は変わらない。
なお東京市場で気になる要因も浮上している。
日本人入国制限に動く国が増えていることだ。「全国休校」のヘッドラインが市場で独り歩きして「日本は危ない」との認識が醸成されている。東京オリンピック開催問題が欧米のトップニュース扱いになる事例も見られる。仮に5月までに終息しても風評は残る。選手団派遣をためらう国が増えても不思議はない状況だ。株式市場も五輪延期・中止をリスクシナリオとして受け止める時期であろう。その場合日経平均2万円割れの可能性があるが、ヘッジファンドにはそこが底値で買いのタイミングと待ち構える姿勢も見える。
海外投資家の先物売買に揺れる東京市場ゆえヘッジファンドの仕掛けには注意が必要だ。
そしてこれからスーパーチューズデーの開票結果が入ってくる。サンダース勝利だとアンチ・ウォール街の急進左派ゆえ株続落は必定。金には更なる上げ要因となろう。
毎晩エキサイティングな市場でアドレナリン出っぱなし(笑)。