豊島逸夫の手帖

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金1700ドル再突破

2020年4月14日

イースター休暇明けの国際金スポット価格は1684ドルから1729ドルまで急騰。その後1710ドル台で推移している。

報道ではスポット価格と先物価格が媒体により使い分けられ、分かりにくい。昨日も色々取材を受けたが、先物価格と現物価格、そして現物価格でも税抜きとか税込みとか非常に煩雑なので説明に時間がかかった。これは金価格表示に関する問題点で、簡素化して一般の人にも分かりやすい表示にすべきであろう。
まぁこれは技術上の問題なので、重要なことは金価格上昇に歯止めがかからず急騰していることだ。

1700ドルを超えるとバブルの領域に突入である。
現物需給から乖離した先物主導の価格で、上げのモメンタムに乗った一儲けを目論むヘッジファンドの買いが加速度的に増えている。
2011年ギリシャ危機の時に、史上最高の1900ドル超えを演じた時と何やら同じ市場環境にある。
1700を超えると逆V字型の展開になる可能性に要注意だ。
ドンと上がってドンと下げるパターン。

長期的に地味に買い増している人たちは特に慌てることはない。
短期的に売買して儲けようとする人は、それなりの覚悟が必要だ。警告しておく。
例えば一か月の間に1700→2000→1600という展開になっても驚かない。
その間、金の売り戻しは急増しよう。既に貴金属店店頭では顧客の買いより売りが多い。
長期派で、なおもこの水準で買いたいという人は10年持つ覚悟が必要だ。10年後なら2000ドルなど「安値圏」になっているだろう。但しその間の乱高下に心臓が耐えられるか。10年の間には1000ドルまで下がる局面だってあるかもしれない。
それが長期積立感覚ならば購入価格が平準化される。

さて足元のマーケット環境だが、昨日はクオモNY州知事が「最悪の時期を過ぎた。」と宣言。NY州死者数(遅行指標)は依然700人台と多いが、入院者数(先行指標)が急減傾向になってきた。更に米国では今週にも現金給付の準備が整いそうだ。日本に比べスピード感がある。総じて、欧米ではコロナウイルスの出口の話が増えてきた。但しこの出口が難しい。いつ、どのような基準で、どこから移動制限を解除するのか。コロナ第二波の可能性も含め実に悩ましい問題だ。早過ぎれば、ぶり返す。遅きに過ぎれば、経済が悲鳴を上げ不況が長引く。なお各国が金融財政政策総動員(特にFRB)で金融危機のリスクは減った。

昨日はカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁の「経済閉鎖、再開が18か月間繰り返される事態も考えられる。」との発言が市場心理を冷やした。金には上げ加速要因となった。

円相場も107~108円で推移。107円台になると「円高」とメディアは騒ぐが、この経済の惨状であれば円90円でも不思議ではない。その視点に立てば107円は「円安」だ。円建て金価格40年ぶり高値の背景には、この「円安」要因がある。

こういう話を取材ですると「107円は円高じゃないですか。」という質問が必ず飛び出す。出来上がった記事も円高・円安ごちゃ混ぜで分かりにくい記事になりがちだ。
私は長年慣れているから根気よく時間をかけて(コロナで電話取材だけになったが)基本から説明する。金のことが一般メディアで話題になることは珍しいので、誤った情報だけは与えたくないとの強い思いである。

昨日の取材記事の一例。
産経新聞↓
https://www.sankei.com/economy/news/200413/ecn2004130030-n1.html

朝日新聞↓
https://www.asahi.com/articles/ASN4F6TW9N4FULFA02F.html

2020年