豊島逸夫の手帖

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マイナス価格の背景、原油市場が抱える構造問題とは

2020年4月22日

原油価格の異常な値動きの要因として米国金融規制改革法(ドッド・フランク法)の影響が無視できない。
まず商品先物市場で投機的売買により原油価格が乱高下して庶民生活を直撃することが問題視された。

そこで大手投資銀行などの原油自己売買を法律的に規制した。
原油売買部門は縮小・閉鎖され、リスクを取って売買するトレーダーが急減した。その結果、市場の流動性が少なくなり価格が乱高下しやすくなったのだ。

ウォール街の金融機関でリストラされた原油ディーラーたちは、規制の緩いヘッジファンドなどにリクルートされていった。中には中東の政府系ファンドに雇用されたディーラーもいる。政府系ファンドとは言え投機的売買も行う。ウォール街の規制から解放されて水を得た魚の如く活躍している。年俸もあの高いウォール街より更に高い金額が提示されているようだ。

そもそも原油取引の知見を持つトレーダーの数は限られている。そこに経験の浅い機関投資家や個人投資家が原油ETFを通じて参入してくると、それこそ飛んで火に入る夏の虫の如しである。今回も原油ETFで大きな損失を被った個人投資家が既にNY市場では話題になっている。

原油ETFにも問題はある。価格変動の激しい原油価格に正確に連動できない場面があるからだ。SEC(米国証券取引委員会)は当初から原資産(原油)とETF価格の乖離(トラッキングエラー)を懸念していた。筆者は金ETFをNY証券取引所に初めて上場するプロジェクトに参加した時SEC詣をしたのだが、最も厳しく問われたことがトラッキングエラーであった。

マクロ的視点では、今回サウジが増産・安売り戦略に走ったことで、OPECの結束が緩み、価格形成の主導権を投機筋が掌握する結果となった。

そこにトランプ大統領が大統領選挙を視野に口先介入する局面も増えそうだ。重要州テキサスではシェールオイルが基幹産業である。21日にもシェールの雇用を守る意図をツイッターで宣言していた。

サウジ・ロシアに米国も加わるOPECプラス&プラス構想も市場の話題になってきた。
年後半にかけてトランプ発言に投機筋が反応して原油価格が暴走する可能性にも要注意である。

なお金価格も原油激動に振り回され換金売り第二波が出たり、下がったところは買い出遅れ組がすかさず拾ってゆくなど、慌ただしい1700ドル攻防局面である。

2020年