2020年5月15日
金スポット価格水準が1730ドルまで切り上がってきました。
昨晩はNY株が大荒れ。ダウが400超安で始まった後、一転、上昇に転じ、結局377高で引けました。上下変動幅は800ドル近く。株価のボラティリティー(価格変動)があまりに激しいので、一般投資家は手を出せず、安定性のある金にマネーが流入する構図となっています。理屈で言えば、株と金が逆相関というより、それぞれのリスク変動が独立した動きになっているので、リスク分散効果が得られるわけです。
更に米中関係悪化もエスカレートしてきました。
特にトランプ大統領が「中国との関係を断つかも」、「習近平とは当分話したくない」など、突き放したような語調で語ったので、市場には「断交も辞さずか」との観測が流れ、金には買い要因となったのです。
米国年金の中国株投資に待ったをかけ、コロナのワクチン開発に関する米国内の情報を中国がハッキングしているとか、中国側を刺激するような発言・行動が目立ちます。そもそも武漢でコロナウイルス流出を招いた責任を中国側に問うているわけです。落とし前つけろと。損害賠償金、更には懲罰的関税引き上げなどを示唆しています。昨日は米国の証券取引所に上場している中国企業が、米国の企業会計原則に適合しない決算を出す場合には、上場廃止の可能性にも言及しました。この件については中国政府が中国企業に中国の企業会計原則に適合するように指示しているという事情もあります。
本欄で書いてきたように、トランプ大統領の大統領選挙を意識した中国叩きということに尽きます。プロレスのようなもので、大げさに威嚇して、実際のパンチは手加減する感じですね。本気で喧嘩する気などサラサラ無い。それこそ米中経済共倒れリスクを誘発して、大統領選挙には不利な材料になりますからね。それでも「米中断交」というような刺激的表現が市場にニュース見出しとして流れると、アルゴリズム取引が反応して機械的に金が買われるというのが実態です。
なお、コロナ関連でも引き続き経済再開後に再発の事例が頻出しており、経済再開の解放感より不安感の方が意識されがちな状況になっています。
国際金スポット価格は1730~50ドルの水準が壁になっていますから、上抜けするか跳ね返されるか、今後の展開には要注意の水域に入ってきました。