2020年8月5日
昨日の国際金スポット価格は、ほぼ「爆上げ」に近い状態で1968ドル(安値)から2025ドル(高値)まで、ほぼ一直線で急騰。これまでの2000ドル突破はNY先物中心限月12月もの限定でしたが、NY先物期近から現物スポットまで本格的に2000ドルを超えました。「2000ドル突破」報道のモヤモヤ感が晴れた感じです。
特に要因はありません。
ドルインデックスがここにきて反騰していたのですが、昨日は急落したこと。93台という低水準での乱高下です。その背景として債券市場で米国債利回りが軒並み史上最低水準で推移していることが挙げられます。
更に今株式市場が注目している米追加経済支援政策の行方。共和党と民主党が議会で火花を散らせています。一人1200ドルの追加現金給付はどうやら「歩み寄り」。NY株はこの進展を好感して上昇しました。問題は失業保険コロナ特別給付の週600ドルが既に期限切れで終了していること。民主党は600ドル継続。共和党は200ドルに減額で継続。その論拠はコロナ前の収入を上回る失業保険給付になる事例が頻発。まともな勤労意欲が萎える傾向が見られることです。失業給付は個人消費に直接的影響を与えますから経済的に重要です。
このような状況で金市場の注目は不可避の米国債超増発。あくまでコロナ有事対応で正当化されていますが借金は借金。国は「夜逃げ」できませんから、おそらく本格インフレを許容して、国の借金の実質価値を減らす方向に動くでしょう。動かざるを得ないでしょう。2021年後半くらいから、デフレからインフレへの懸念シフトが始まりそうです。デフレ、ディスインフレマインドが染みついていますから、そう簡単には変わらないとは思いますけどね。とは言え現在進行中の金高騰はこのインフレ懸念を先取りする動きと読めるわけです。
今後は金融政策から財政政策へ市場の注目もシフトしてゆくでしょう。金融政策はもはや手詰まり感が強く効果的政策手段が見当たりません。パウエルFRB議長もしきりに「財政政策が重要。金融政策だけではいかんともし難い。」というような発言を繰り返しています。
財政政策となると政治問題ですから次期大統領次第とも言えます。現在優勢のバイデン候補が勝てば企業や富裕層に増税する政策を打ち出すでしょう。
さて最近気になること。たまたま関西・中京地区の貴金属店関係者たちから話を聞く機会があったのですが、怖いと思ったのは「金はこのまま上がり続ける」と信じ切って買いに来る顧客が増えていること。そもそも市場関係者のほぼ全員が強気という状況も米大統領選挙までは続きそうですが、上がり続ける相場はありません。特に超高水準に積み上がった金ETF残高の出口がどうなるのか。多くをヘッジファンドが保有しているのが不気味です。逃げ足の速いマネーですから。筆者は大統領選挙後、当面の材料出尽くしによる大きな調整局面を経て、2021年には新たな上げ相場が新米国大統領の下で展開されると見ています。
なお、以下日経新聞記事の抜粋です。
国際指標の一つであるロンドンの現物の金の取引価格は5日に一時1トロイオンス2030ドル台まで上昇。先物価格に続いて初の2000ドル台に乗せた。景気低迷が長引くとの懸念から米国では長期金利が一段と低下。為替市場でドル安が進行し、代替で買われやすい金への資金流入が加速した。
マーケットアナリストの豊島逸夫氏は「今後1トロイオンス2000ドル台が定着する」とみる。
ドル建て金価格の騰勢を受け、円建ての国内金価格も軒並み過去最高値を付けた。5日の国内商品先物市場で金先物は一時1グラム6900円台まで上昇。地金商最大手の田中貴金属工業が公表する小売価格(税込み)も前日比152円高い1グラム7608円となった。