2020年12月11日
バイデン次期政権の対中政策が注目されている。トランプ大統領の「レガシー(遺産)」となった「米中貿易協議第一段階合意」が現状のまま引き継がれるのか。USTR代表にはアジア系女性のタイ氏が起用された。マーケットも注目している。
関税を交渉条件として振り回すことは避けるであろうが、知的財産権保護など「非関税障壁」に関する部分は民主党政権でも譲れまい。その中で米中相互にメリットがあり進めやすいのが「市場開放」だ。
特に社債デフォルトの連鎖が止まらない中国債券市場の育成には外国人投資家の参入が必須である。米国金融業界にとっても中国市場参入は高優先順位の戦略案件だ。
そこでウォール街で注目されているのが、バイデン政権の経済閣僚人事に2名のブラックロック(世界最大の資産運用会社)出身者が含まれていることである。同社で現在幹部のディーズ氏が国家経済会議(NEC)委員長に、更に元顧問のアディエモ氏が財務副長官に指名されたのだ。同社会長兼CEOのフィンク氏は「中国の14兆ドル規模の資産運用市場への参入」を株主向け書類でも強調してきた。トランプ政権下でも自ら北京を訪問して民間金融外交を進めてきた経緯もある。かくして醸成された民間の知見と人的ネットワークをバイデン政権の対中経済政策に活かす思惑が窺える経済閣僚人事と言えよう。
一方、中国の債券市場は未だに「発展途上段階」にある。マーケットの構造改革を経済成長より優先させる時期もあったが、結局市場の質的向上は後回しとなり、コロナ危機では償還猶予など救済を優先せざるを得なかった。その救済措置もコロナからの回復とともに解除されると、支え役を失った社債発行企業は次々に債務不履行の連鎖に陥っている。国内個人投資家はシャドーバンクが組成したハイリスク・ハイリターンの「理財商品」を志向する。結局社債も、そして地方債も大手銀行が引き受けることになる。筆者が顧問を務めていた中国の商業銀行内からは「引き受け」というより「厄介な債券を押し付けられた」とのぼやきが聞こえてくる。地方債は中国人民銀行の適格担保という「甘味剤」が付けられたので、まだマシだという。しかし社債はもろに実質「不良債権」と化すリスクを孕む。格付けも「君たちの水準とは異次元」と嘆かれたこともある。国内から自発的な構造改革が期待できない以上、ここは米系大手金融機関の参入を待つしかないという。
既にバイデン政権人事の意図に応えるかのように、8日にはゴールドマンサックスの現地合弁「高盛高華証券」の完全子会社化承認のための手続きが進行との報道が流れた。ゴールドマンサックス(チャイナ)証券のような名称となりそうだ。ブラックロックも個人向け投資信託を販売する完全子会社を設立している。
とは言え中国人個人投資家のリスク意識は低い。債務不履行になれば国が補償してくれて当たり前との甘えから未だに抜けきれない。前述の「理財商品」も銀行支店内で販売されているが、所謂「ディスクレ=リスク開示」が見当たらない。カウンターの女性行員が粛々と行内マニュアルに従ってさばいている。
中国市場開放と同時に金融リテラシー啓蒙活動も必須であろう。
なお、金ETFが1年ぶりに資金流出に転じたとの記事が今朝の日経朝刊商品面に載っている。
これは昨日の本欄にも書いたこと。
11月に107トン、金ETF現物残高が減ったのだ。金価格が急落した時期ゆえ、利益確定売りが膨らんだ。
それでも年初からの累積では916トンの流入超過である。
安値圏では出遅れ組の買いなどが出ているとの筆者コメントも引用されているが、この金ETF統計はあくまで過去の値動きを検証するためのデータで遅行指標なのだ。
さて、いよいよ寒くなってきたね。来週の山は大雪になりそう。スキーヤーとしてはルンルンとなるところだが、今年はコロナがね。。。外出自粛とかで気楽にスキーにも行けない状況に。私としてはペット・ロスに加えてスキー・ロスかよという感じ。京都も感染が急拡大とかで、行きつけの祇園らく山に冬の大根の炊いたんとか、クリーミーな大ぶり海老芋を食べにゆこうかと思っていた矢先のことで残念。らく山の大将にもご無沙汰だ。北海道の冬の味、タチ(タラの白子)も食べたい。相変わらずの食い意地だよ(笑)。