豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 「自ら接種後は、金を買いたくなるかも」複雑な投資家心理
Page3158

「自ら接種後は、金を買いたくなるかも」複雑な投資家心理

2020年12月9日

世界に流れた英国でのワクチン初接種事例の報道映像を観ての某ヘッジファンドの発言だ。「もし自分が接種を受けたら、株を売り、金を買いたくなるかも」。。。

所謂「ワクチン相場」は「期待」が「現実」に変わる時、正念場を迎えそうだ。
恋愛から結婚への移行の如く「現実」は厳しい。

まずワクチン接種でコロナ危機が克服できる保証は未だ無い。副作用のリスク含め、やってみなければ分からないというのが実態であろう。コロナが残す心理的傷跡も容易には癒えまい。スポーツや劇場などのイベントが満席で安心して盛り上がるのは何時のことか。

そして経済的には有事対応で繰り出された未曽有の金融財政政策のツケがワクチン接種でも消えない。まずバイデン増税が懸念材料だ。1月5日のジョージア州上院決選投票の結果次第でネジレ議会になれば、共和党が増税案を拒否するとの観測が株価「いいとこ取り相場」を生んだ。しかしツケを払う有効な代替案は見えない。期待のイエレン次期財務長官といえども「魔法の杖」は持ち合わせていまい。

法人税21%から28%に増税。富裕層の株売買益に39%超課税などのバイデン増税は重い。政策優先順位としては、バイデンリフレ策が先行して増税論議は21年後半となろうが、企業業績、そして株価に下押し圧力、金の上昇バイアスとしてジワリと効きそうだ。

そこで市場の注目はパウエルFRB議長となる。
前回FOMCで議論された量的緩和拡充策が下支えとして期待される。米10年債利回りが1%を大幅に超えれば、FRBが長期国債購入を増やし、金利急騰を抑え込むシナリオは現実的だ。実質イールドのマイナス状態が維持されれば、金を含むリスク資産へのマネー流入は止まるまい。今や米国個人投資家の待機資金は1兆ドルを超すとされる。

かくして2021年、株も金も高値圏を維持する。
本当の正念場は2022年との観測がヘッジファンド勢に多く見られる。とりあえず来年を凌ぎ、その間の展開次第で2022年に向けての投資戦略を吟味するとの姿勢が現実的シナリオのようだ。

中期的金価格動向(筆者の言うところの「魚の目」)は2022年に潮目の変化があるかもしれない(上にも下にも)。「鳥の目」で見れば長期金価格上昇トレンドに変わりはない。3000ドルを目指す。

最も難しいのが「虫の目」。連日のようにコロコロ変わる。長期投資家を自認しても短期価格乱高下も気になるのが人間心理というもの。かくいう筆者も未だに「悟り」が開けるほどの境地には達していない(苦笑)。たぶん一生、欲望の呪縛から抜け切れまいと割り切っている。
逆に欲望も無い人間像というのも味気ないしね。。。。
ペット・ロスで色々考える今日この頃です。。。。

2020年