豊島逸夫の手帖

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コロナ禍、金が史上最高値まで買われる理由とは

2020年9月3日

先般、読売新聞朝刊に寄稿した原稿です。下の写真とともに掲載され、10分×3部の初心者向けネットセミナー動画付きでした。

 未曽有のコロナ危機に見舞われ、経済・投資の世界でも異変が起きています。世界的に経済成長率が失速して失業者が急増しているのに、米国の株価は史上最高値を更新しました。その最大の理由は、主要国が、経済を立て直すために、これまで考えられなかったような巨額のマネーを「大放流」しているからです。
 前代未聞の経済支援策です。そのために既に巨額の財政赤字を抱える国々が、この際、更に国の借金を増やすことも、コロナから経済を守るためにはやむを得ません。今日をしのぐためには、明日のことまで考える余裕はないのです。しかし、ばらまかれたおカネが数年後にはインフレを誘発することを心配する投資家たちが金を買い始めたのです。紙幣はいくらでも刷れますが、数億年の自然現象で生まれた希少価値を持つ金を「刷って」増やすことは不可能だからです。

 かくして、金が史上最高値を更新したのですが、投機的な先物市場の影響で日々の価格は乱高下します。いつ買えばよいのか、タイミングが難しい。そこで、株式市場のNISAやiDeCoと同じように金も「定額積立」が主流になりつつあるのです。金価格が高い月に買える金の量は少なく、安い月には多くなり、長期的には最も効率的な投資法なのです。
 ただし、長期的に価格の上昇が見込まれることが大前提。金の場合には陸の埋蔵量の採掘が進み、残るは海底金鉱脈。しかし、液体の原油なら噴出してくれますが、金鉱石は固体で、しかも1トンから抽出される純金の量たるや2~3グラム程度なのです。これからはリサイクルに依存せざるを得ないでしょう。
 なお、金は金利を生みませんから、資産全体の10%程度の保有に限定すべきです。ただし、今や、預金はゼロ金利。しかも今後は預金口座手数料が課される可能性もあります。一方、国債はマイナス金利が当たり前の世の中。預金や国債の安全資産神話が揺れているので金が浮上しているわけです。

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2020年