豊島逸夫の手帖

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厳戒下の株価急反発、金は急落

2020年2月5日


4日のNYダウ平均はいきなり300ドル超高で始まり400超高で引けた。先行逃げ切りのパターンで終日高値圏を維持した。


特にテスラ株が3日の約20%高に続き4日も約13%高となり注目を集めている。今やトヨタに次ぐ時価総額の自動車株だ。通常の投資家による買いで実現する上げ幅ではない。その実態は典型的な「ショートスクイーズ」(空売り筋締め上げ)現象だ。そもそもマスク社長のユニークな発言などで同社株はヘッジファンドの空売り攻撃の標的にされやすかった。カリスマヘッジファンドのデビッド・アインホーン氏は公然とテスラ株に関して弱気見通しを披歴していた。ところがテスラ社の19年10~12月期決算が想定外に好転したため空売りのポジションが相次いで買い戻された。更に他のヘッジファンドが空売り筋の足元を見て買い攻勢をかける。たまらず「損切」の買戻しが誘発される。プロとプロの空中戦の様相だ。そこにモメンタム(勢い)に乗って動くCTA(超短期投機筋)も参加。個人投資家も「バスに乗り遅れまい」との感覚で買いを入れてくる。かくして様々な投資家の買いが共振現象を引き起こし、2日で33%以上という上げ幅となったのだ。テスラ株は200ドルから400ドルのレンジで推移していたが4日には一時900ドルを突破する局面もあった。さすがに引け際に超短期投機筋の手仕舞い売りが出て800ドル台で終えている。しかし市場では今週にも1000ドル突破の予測が流れる。


このテスラ株「暴騰」は極端な事例だが、総じて新型肺炎による経済減速を見込み株売りに走ったヘッジファンドの買戻しが上げの推進力になっている。
まともな株買い要因と言えば1月の米ISM製造業景況指数が50.9に上昇したことくらいであろう。


更に中国人民銀行の18兆円規模の緊急流動性供給が市場では「当局の迅速な反応」として評価されている。米国経済に影響が波及すればFRBの利下げも見込める。結局最後は中央銀行頼みの構図が透ける。


中国では民間銀行・保険会社を監督する「中国銀行保険監督管理委員会」(銀保監会)も緊急の「指導文書」を発表した。融資は医療関係を優先し、貸し渋りや融資回収には慎重な対応を促し、金利引き下げには寛容な対応を指示。住宅ローンやクレジットカードの返済遅延にも柔軟な対応を求めている。いつもは「鬼の銀保監会」と恐れられているが今回ばかりは「神対応」のようだ。


財政面でも救済措置が強化されよう。一時は「債務削減」を重要視して、地方政府の野放図なインフラ投資を抑制する姿勢を見せていた習近平政権だが、一転地方政府下の融資平台経由インフラ投資を復活させる動きを市場は既に期待している。
かくして政策期待の株買いが先行中だ。


しかし18兆円規模の資金供給が末端ではゾンビー企業救済ともなりかねない。溢れる流動性は不動産バブル再燃リスクを連想させる。
緊急救済措置は投資家のモラルハザードを醸成しがちだ。
米中ともにバブルの匂いが漂う株価反騰である。


NY金は1550ドル台までドンと下げた。昨日本欄で一旦下がったほうが助走距離が長くなり、金の高値も狙えると書いたばかり。20ドル以上下げたけど未だ1550ドル台かという感じ。中期的に健全な調整局面。


アイオワ州民主党党員集会での投票集計に不備があり未だに最終結果確認できず。一応若手ブティジェッジ氏が僅差でサンダース氏をリードして一位。それにしてもいきなり民主党は大失態。トランプ陣営の高笑いが聞こえるよう。


今朝もガーラ湯沢は晴天なり~~。


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2020年