豊島逸夫の手帖

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金、史上最高値水準到達

2020年727

今朝アジア時間帯でスポット金価格が1923ドルの史上最高値前後の水準まで急騰しています。投機的な相場になってきました。1800ドル台を「駆け抜ける」如く通過して1900ドル突破。ギリシャ危機の時に1923ドルという史上最高値を付けた時と同じようなスピード違反気味の急騰です。

ギリシャ危機の当時はNY先物主導の上げで短命に終わりましたが、今回は金ETF主導の上昇ゆえ、高原状態が米大統領選挙までは続くでしょう。問題は金ETF残高の半分近くを占めるヘッジファンドの動きです。彼らは特に長期に保有する目的ではなく、年内にリターン(売買益)を稼ぐ手段として金に目を付けているのです。従って金ETFへ流入したマネーがいずれ流出に転じることは必至です。もちろん年金などの長期マネーがあとの半分を占めるので、この部分は「根雪」として残ります。ドカ雪の如く積み上がった新雪が表層雪崩を起こしやすいのです。

なお、日本の連休中から米中関係悪化がエスカレート。両国の領事館撤去合戦に発展。金の買い要因となっています。そもそも有事の金という言葉は米ソ冷戦の時代に生まれましたが、コロナ時代には米中冷戦が有事の金買いを誘発する展開となりつつあります。

更に、米国の「実質金利」が過去最低水準に達したことも見逃せません。先週10年金利ベースでマイナス0.9%にまで下がりました。名目金利はゼロ金利なのに物価は若干ながら上昇しているので銀行預金では年0.9%目減りするということです。こういう経済状況ではマネーが金のような実物資産に流れます。コロナ禍で実物資産の不動産が下げているので金が選択されるという事情も見逃せません。7月25日の日経朝刊に「米の実質金利 過去最低に 進むドル安、株式などに流入 金は最高値に迫る」という記事が載っています。「金の上昇は各国で金融政策と財政政策が一体化しつつあることへの投資家の懸念が反映されている」との筆者コメントも引用されています。要はコロナ有事対応で財務省が国債増発、日銀FRBが国債購入という危うい図式のことです。

更に、今日発売の週刊エコノミストでは「コロナ株高の終わり 危うい株価の『峠』は9月 中銀下支えの"手じまい"も」という特集が組まれ、以下のカバー記事で筆者コメントが色々引用されています。要はFRBの国債保有が異常に膨れ上がり、いつか保有国債を減らす(資産圧縮)という出口を迎える。その時ドル金利は急騰。バーナンキショックの再来リスクがある。一方未曽有のマネーばら撒きは来年以降インフレリスクとなる。中央銀行への不信が金価格高騰を招いたと言えようというような発言です。以下はそのカバー記事の無料配信URL↓

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200804/se1/00m/020/062000c

更に、BSテレ東「日経モーニングプラスFT」に生出演して12分ほど金について語った番組も今週火曜まで無料配信されています。放送日は7月22日(水)でした。番組の11分くらいから私の出番。

https://video.tv-tokyo.co.jp/mplusft/episode/00075756.html

2020年