豊島逸夫の手帖

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中国全人代延期の衝撃

2020年2月18日

全人代と言えば中国の国会です。全国から3000人の地区代表者たちが毎年3月5日に集結する中国の最大級イベントです。このような重要日程が延期を余儀なくされました。習近平政権、正念場という危機感がヒシヒシと伝わってきます。さすがの強権政治もウイルスまでは支配できなかったということですね。財政金融政策総動員で支える姿勢を露わにしています。

上海株は新型肺炎勃発前の水準まで回復していますが、ここではオールチャイナの国家隊による必至の買い支えです。財政出動も小粒で、大型インフラなどは労働者も動けずサプライチェーン=モノの流れが分断されている状況では限界があります。金融政策は中小企業向け融資促進が謳われますが、マネー供給を増やすことの副作用はインフレ。既に豚肉・野菜などが価格急騰で物価上昇率は5%を超えています。物価は上がっても経済が減速する、所謂スタグフレーションのリスクが顕在化しています。

今日はアップルが新型肺炎の影響で販売目標未達と発表され、マーケット心理が悪化しました。

今日は連休明けのNY市場も再開されます。

トランプ政権がファーウェイへの規制(米国製部品禁輸措置)を強化する姿勢を明らかにしたことも悪材料になっています。

NY金も1585ドルまで上がってきました。1600ドル目前。但しこの壁が厚い。

なお専門的になりますが、今の金高はユーロキャリーで支えられていると見ています。

ユーロの対ドルレートは年初の1.20台から1.08まで一貫して下げ。そこでユーロを借りて金を買い、上がったところで金を売りユーロを返済する。ユーロを借りるのでマイナス金利で儲かり、金でも儲かり二重のお得感。欧州の金ETF残高が増えていることは、ヘッジファンドによるユーロキャリーによる金買いを映す現象と言えます。このユーロキャリーのリスクはユーロ高。ユーロを返済する時にユーロ高になっていると為替差損が生じるからです。市場では投機的なユーロ売りポジションが膨れ上がっているので、いずれ巻き戻しのユーロ買戻しの波は不可避でしょう。

ユーロキャリーはプロ向けトークですが、一般投資家向けには今朝の朝日新聞全国版に金について寄稿しています。

2020年