2020年6月12日
ここのところ価格を大幅に上げていた株式市場だが、昨晩はダウ1861ドル安の暴落を演じた。史上4番目の下げ幅だ。ここまで急反騰してきたが、多くの市場参加者が最悪の状態にある実体経済から遊離した株価に疑念を持っていた。それでも皆が買うから私も買うという投資家心理で株が買われてきた。
しかし、ここにきて一挙に株の「コロナバブル」が破綻したと言えよう。当面は値動きの激しい状況が続きそうだ。
恐怖指数=VIXも29から42まで急上昇。40の大台は「危機圏」とされる。
株暴落の理由は二つ。
まず昨日本欄にて詳述したように、パウエルFRB議長がFOMCでかなり悲観的な経済見通しを語ったこと。
そして米国でコロナ第二波と思われる感染者増がテキサス、アリゾナ、フロリダなどの州で顕在化してきたこと。単に検査数増加だけでは説明できない感染者増と見られている。例えばアリゾナ州の場合は、夏は暑いのでエアコンをつけっぱなしで部屋に籠ることが多い。更に暑いのでマスクを着用する習慣が無い。この事例は猛暑を迎える日本にも教訓となろう。
市場は祝経済再開モードに水を差された感がある。トランプ政権は、もうロックダウンはしないとの姿勢だ。大統領選挙を意識しての強行突破であろう。しかし今後NYなどで第二波が起きると国民的ショックは強くなろう。
この二つの要因は重い。現状は実体経済から遊離した株価が、実力相応の株価水準に回帰してゆく過程と言えよう。
そして金市場の反応だが、VIXが40の危機的水準に接近すると、安全資産の金も現金化して不意の出費に備える事例が出始める。特に信用取引で株を売買している投資家は、株価が暴落すると追加証拠金(マージンコール)を現金で支払わねばならない。そこで利が乗った金買いのポジションを手仕舞うことが手っ取り早い現金捻出となるわけだ。金はATMの如しと言われる所以だ。
ただ今回の換金売りは未だ限定的だ。金国際スポット価格は1720ドル台に留まっている。昨晩は安値1719、高値1747のレンジで推移した。株が暴落して換金売りが出始めても金は依然歴史的高値圏にある。
なお、為替はやや円高に振れているが以前に比しレンジが狭い。概ね106~109円、広く取って105~110円程度。
従って円建て金価格が従来動きやすい地合いと言えよう。
なお、106円台で円高と騒がれるが、史上第四位の株暴落が起こるような市場環境であれば96円になっても不思議ではない。私は今の円相場が円高というより円安と見ている。