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バイデン増税、ヘッジは政治献金77億円超

2020年10月30日

事の発端は第二回米大統領候補討論会でのトランプ発言だった。
「バイデン氏こそウォール街からカネを貰っている。私ではない。」
その後ウォール街からバイデン陣営への政治献金の額が注目された。
そして29日、複数の米国メディアは金融証券業界からバイデン陣営への政治献金が7440万ドルに達したと報道した。対するトランプ陣営への政治献金は1810万ドルに留まる。

バイデン氏はこれまでウォール街とは距離を置く姿勢を鮮明に打ち出してきた。自らが生まれ住んだペンシルベニア州スクラントン市を「庶民の街」、トランプ氏が住んでいたニューヨークのパーク・アベニューを「金持ちの街」と位置付けた。

「私は今回の大統領選挙をスクラントンとパーク・アベニューの選挙運動と見ている。トランプ氏がパーク・アベニューから見るのはウォール街だけ。彼が考慮することは株式市場だけだ。」と述べている。
富裕層に対する法人増税のみならず株式売買益への増税も明言している。

にもかかわらず、ウォール街がトランプ氏への献金を4倍以上上回る額でバイデン氏に投じた。
これはウォール街流の「増税リスクに対するヘッジ」と理解される。
バイデン勝利がほぼ確実視される状況で、バイデン政権下でホワイトハウスにお出入りできる状況は確保しておきたいとの本音が透ける。増税は不可避だが「お手柔らかに」とばかりに、事あれば「殿、ご乱心」を直訴できる環境の維持が重要なのだ。

バイデン政権下の株価予測もバイデン増税を織り込み始めた。
カリスマヘッジファンドのポール・チューダー・ジョーンズ氏は「バイデン政権ならインフラ投資など大型財政期待で当初は株価が上昇するだろう。しかし、その後増税が企業業績をジワリと下押す。」と語った。これが今やNY市場ではメインシナリオになりつつあり。

感染悪化による景況感推移を見極め、増税決定のタイミングを後ろにずらすが効力は遡及することも考えられる。このようなケースではマーケット視点でホワイトハウスの動きをいち早く察知することが欠かせない。そこで政治献金が生きる。

長期的に見れば、大型財政のリフレ効果が増税のマイナス効果を上回りそうだ。当初は「バイデン勝利なら株安」との見解が主流であったが今や「株高」予測に変わった。

なお、以上の議論の大前提は「バイデン勝利」だ。しかし市場には選挙結果について未だ不透明感が残る。日本時間本日早朝、NY市場引け後に行われたアップル社の決算報告でも「ガイダンス」が出せず同社株価は時間外で4%超急落している。VIXも37まで反落したが依然危機的水準とされる40が射程内の高水準だ。
前回「トランプ当選」を読み切れなかった苦い経験もあり、マーケットは選挙直前にポジションの身辺整理モードに入ったままである。

最終盤で両候補が激突するのは最重要激戦州のフロリダ。ここでの選挙結果がもつれると長期化するリスクもある。ただ同州では既に700万人以上が事前投票を済ませており、予想より早い段階で結果が判明するとの見方も浮上してきた。フロリダでかなりの差の「当確」が打たれれば、どちらの候補にせよ「長期化リスク」は回避され、先走り気味の株買いが始まる可能性もある。実名入り政治献金リストも公表されているが、そこにはヘッジファンドの名前が目立つ。高速度取引が市場を支配する状況になってから初の大統領選挙ゆえ、政治情報への瞬間的アクセスがファンドのパフォーマンスを決めるのだ。

このようなマーケット状況で国際金価格は1860ドル台にある。
大統領選直前に現金化して様子を見る姿勢だ。
仮に訴訟合戦が長期化するシナリオになれば、更なる不透明感から金に換金売りが増える可能性もある。
しかし、下がったところには出遅れ組の買い、或いは一旦利益確定売りした投資家の「買い直し」も入りそうだ。

さて、今日の写真は藁草牛の肩の部分。筋肉が発達していて赤身でエキス分やコラーゲン、旨味が豊富で本来の肉の味がする。なんと100時間かけてジワリと熱を通したので噛めば噛むほどに味が出てくる。相場大荒れの時は肉食系になるのはいつものこと(笑)。柔らかなフィレが好まれるが、しっかり固めの部位もいいね。リニュ(Li.nu)@西麻布星条旗通り。因みに私が今までで最も美味しいと思ったのはロンドンで食したアルゼンチン牛。ここの味が忘れられなくてNYでもアルゼンチン牛専門レストランを探したが無いのだよね。NYに駐在していた知人がアルゼンチン牛の味が忘れられず、帰国の時もわざわざブエノスアイレス経由のフライトにしたというエピソードもあるくらい。

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2020年