豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 有事の金のドカ買いは悪魔の選択
Page2939

有事の金のドカ買いは悪魔の選択

2020年1月9日


米イランの報復合戦。
金価格は日本時間で1610ドルを突破したがNY市場では1550ドル台まで急落。
本欄2019年12月19日付け「金価格を読む6つの勘所(保存版)」で『有事の金の「ドカ買い」は悪魔の選択』と書いたよね。
有事の金はやはり「売り」であった。


昨日の市場は大統領選挙を視野に武力衝突は回避したいトランプ大統領。
弾道ミサイル発射で「報復」の大義は果たしたとするイラン。
ミサイル標的は基地内米国人居住区という急所を外し、死者は出さずの配慮。
阿吽の呼吸で両者暫時矛を収めた。
この詳細は8日付け本欄「イラン報復、金は一時1600ドル突破」を参照されたい。


米中と米イランの両面作戦を強いられるトランプ大統領には今後も危うい綱渡りが続きそうだ。

日本の視点で気になることは、トランプ大統領が「対イラン経済制裁強化」を表明したこと。同盟国にも足並みを揃えるように要請する可能性が強い。
それにしてもイランの経済成長率はIMF発表でマイナス9.5%。2017年にはプラス3%だった。神権国家ゆえ国民も緊縮に耐えよとなろうが我慢にも限界があろう。


なお、8日には注目のゴーン元会長記者会見があった。
別途、米国CNBCの単独インタビューにも応じており「日本脱出は高くついた」との発言がウォール街の話題になった。事情通の推定では相場は円換算で20億円は下るまいとの話が流れていた。


海外メディアでは、FTなどでゴーン元会長逃亡を仕切った人物としてテイラー氏の名前が挙がっている。元特殊部隊で人質救出のプロ。NYタイムズ記者をアフガニスタンから救出など「実績」を積み上げ、FOXニュースや米国ABCも「顧客」とされる。米麻薬取締局の要請でレバノンの犯人を確保したことも。同じくレバノンでの誘拐人質救出でも手柄をあげた。失敗例もあり、隠蔽工作でFBIスタッフの買収を試み有罪になった。スポーツドリンク業に進出したことも。周囲には良き隣人を演じていた。「必殺仕事人」を連想させる。仕事料も安くはあるまい。


カルロス・ゴーン65歳。日本に居る限り延々5~10年裁判が続き家族との面会も不自由。レバノンに行けば英雄扱い。日本の司法は及ばない。立つ鳥後を濁しても全く未練はない。結果は異国日本独特の検察流の是非に大きな一石を投じた。「家族と弁護士とのアクセスを制限された」ことを記者会見では繰り返していたが、これは欧米社会では響く。
お好みのメディアだけ招き、ゴーン節でここぞとばかり捲し立てる記者会見には後味の悪さが残った。


なお、金価格だが下がったとは言え1550ドルは高値水準。上昇トレンドは崩れていない。ただ上げのスピード違反。押し目は拾われる。


それにしても昨日は激動の24時間。朝一のミサイルから深夜のゴーン記者会見、トランプ演説。息抜く暇もなく集中力を維持していたからさすがにグッタリ疲れたよ。朝から大福の甘味が沁みる(笑)。

2020年