豊島逸夫の手帖

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「ハト派の女性旗手」の変身、ちらつくバイデン色

2022年114

13日にはブレイナード現FRB理事の副議長指名承認のための公聴会が開催された。ブレイナード氏と言えば、そもそもバイデン大統領の次期FRB議長指名の際に現職パウエル氏の対抗馬であった。バリバリのハト派で、万が一同氏が議長職に指名された場合の市場の反応は「利上げ遠のく」となろうと論じられたものだ。更に今回の副議長職の指名にあたってはサンフランシスコ連銀デイリー総裁が対抗馬とされ、「ハト派女性二人の一騎打ち」などと市場では囃されたものだ。「承認」されれば理事から副議長への「昇任」ともなる。
そのブレイナード氏が議会公聴会では見事にタカ派に変身してみせた。利上げ、資産圧縮などの「パワフルなツール」を躊躇なく使うと語った時には「これが、あのブレイナード氏か」とのサプライズ感があった。「インフレ率は高過ぎる。国中の働く人たちは今の給料でやってゆけるのか心配している。我々の金融政策はインフレを2%に戻し、且つ全ての国民のために経済を回復させることだ」。
働く人たち、全ての国民などの表現にはバイデン大統領を意識したポピュリストの匂いも漂う。
ウォール街が警戒するのは同氏が規制強化派であること。それゆえバイデン氏のお眼鏡に叶ったことは確かであろう。
ブレイナード副議長議会承認に関しては、パウエル議長より反対票が多いとは言え当確が打たれている。

更に13日にはフィラデルフィア連銀ハーカー総裁(タカ派)が複数回メディアに出て、利上げ3~4回を支持した。
連日ここまでタカ派色が強まるFRB新体制を見せつけられると市場はパウエル氏が利上げを急ぎ過ぎるリスクを意識するようになる。
例えばオミクロン株或いは新たな悪性変異ウイルスの出現で経済が悪化する場合には、パウエル氏は利上げの暫時棚上げを強いられよう。その場合複数回の利上げを既に織り込んだ市場はポジションの巻き戻しを強いられ混乱するであろう。

雇用についても不透明感が残っている。パウエル氏は失業率が4%を割り込んだことで、利上げの条件である完全雇用をほぼ満たす「最大雇用」が達成されたと見ている。
しかし未だ300万人以上の「隠れ失業者」が残っている。求職活動はしていないので雇用統計上で失業者とは見做されないのだが、当面働く気はない人たちだ。彼らはコロナが終息するまでは様子見を決め込む。いずれ復職する意志があるが焦ってはいない。当面は子育て、自己研鑽などに時間を割き、郊外に暫時転居して家族との時間を大切にする。米国の所謂ミレニアル世代に多いライフスタイルだ。コロナ給付金や失業保険加増、更に自粛中の貯金などで金銭的には未だ余裕がある。

雇用統計上ではコロナで勤労意欲を失った高齢者とともに労働参加率がコロナ前の水準に戻らない理由とされる。
それでもパウエル・ブレイナード新体制のFOMCが利上げを急ぐにあたって、インフレ問題で支持率低下加速中のバイデン大統領への政治的配慮はないと言い切れるのか。
クラリダ現副議長に新たな個人的株式投資問題が発覚して、予定より2週間早く辞任したことでFRBへの信頼感もやや揺らいでいる。
市場の合言葉も「FRBには逆らうな」から「FRBを疑え」に変わりつつある。

市場ではブレイナード副議長はパウエル議長のお目付け役ではないかとも囁かれる。
そもそも利上げ年内3~4回、更にFRB資産圧縮が年内開始と見られているが未だ何も決まっていない。全てはFOMC参加者の個人的予測の段階である。それゆえ株式市場のボラティリティーが激しくなっている。この状況は3月まで続きそうだ。
更に米国消費者物価上昇率7%発表後、外為市場ではドル安に転じ、債券市場では長期金利が低下中だ。FRBを信じ切れない投資家たちが国債売り、ドル買いの人気トレードをとりあえず手仕舞う動きが顕在化している。

そして金市場ではFRBを信じられず、インフレを抑え込めず、制御不能になるリスクを感じている投資家たちが金を買っている。
なお、本日日経新聞朝刊に「金の上昇相場に転機」との記事あり。ビットコインとの関係も論じられているが、筆者の見解の詳細は以下の原稿「金とビットコイン」に書いたとおり。

https://gold.mmc.co.jp/toshima_t/2022/01/3417.html