豊島逸夫の手帖

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金を買いたがる日銀・財務省OB

2021年12月29日

筆者の知り合いの日銀・財務省出身者たちが、ひとたび退官して一個人投資家になるや、やたらに金を買いたがる傾向は相変わらず続いている。加速していると言っても過言ではない。量的緩和の現場に長くいると、一万円札がただのペーパーとしか見えなくなるものだ。まさに通貨価値の希薄化を現場で痛感してきた人たちが、虎の子の退職金で金を買いたがり、筆者のところへ相談に来る。40年間、円という通貨の番人をやってきた人たちの行動ゆえ、筆者は背筋がヒンヤリする。更に財務省OBたちは自ら日本国の財務諸表を作成してきたが、日本の公的赤字はもはや危機的ゾーンを超えたという。2021年には現役財務省トップが文藝春秋に寄稿して話題となった。そういう背景があり、やはり虎の子の退職金で金を買いたがる傾向が見られるのだ。「円やドルはいくらでも刷れる。何か刷れない資産はないものか、模索して金に辿り着いた」。日本経済の裏表を知る立場にいた人たちだけに説得力がある。実はFRB議長にも似たような事例がある。FRB議長18年間という最長在任記録を持つグリーンスパン氏。退官後の講演料は一席10万ドルと言われた。その彼があるヘッジファンド主催の国際会議で講演後、事務局から講演料支払いについて米ドル・ユーロ・ポンド・人民元・円、どの通貨で振り込めばよいか尋ねたところ、ボソリと「ゴールド」と言ったとのエピソードがある。半分ジョークにせよ、その発想は日米共通と思われる。

さて、パウエルさんは在任中に投資信託売却について責められたが、彼も退官後には金を購入したくなるような状況になるのか。かなり怖い話題ではある。