豊島逸夫の手帖

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新年、急落で始まった金市場

2022年1月4日

2021年12月の最終週に1830ドル台まで急騰していた国際金価格だが、年明け3日のNY市場では1800ドル前後の水準まで急落した。結局これまでと変わらぬレンジに逆戻りの様相だ。

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昨日に関しては、以下に詳説するドル金利高とドル高が金売りを誘発した。
2022年のNY市場初日は米10年債利回り1.6%台で急伸という「金利急騰」で始まった。特に市場が注目したのはドル長短金利差拡大だ。政策金利に連動する傾向がある2年債利回りも上げたのだが、上昇率では将来の景況感を映す10年債利回りが勝る。その結果イールドカーブが立ってきた。
2021年は2年債利回りが急上昇する中で、10年債利回りが1%台前半の低位で推移する局面が頻発した。長短金利差が縮小してイールドカーブ平坦化が顕在化。FRBの複数回利上げが経済を冷やすシナリオが懸念された。
それだけに2022年の市場初日にイールドカーブが立ってきたことで株式市場には安堵感が流れたのだ。
昨年終盤に荒れたVIX指数も16台まで下げ、警戒ラインとされる20台を下回る。安全資産の金には売りが入った。

一方、2022年外為市場では更なるドル高が見込まれる。
そこでヘッジファンドなどの投機筋に狙われているのが「円」だ。
本欄2021年10月15日付け「円安も外国人主導の展開、118円オーバーシュートも視野」にて言及した国際通貨投機筋と同じ人たちが、今や「2022年はオーバーシュートで122円」を視野に入れる。
FOMC参加者の2022年3回利上げ予測に対し、市場では2回以下と見る向きが増えていた。しかしオミクロン株の南アでの推移を見るに、既にピークアウト傾向が顕著なので、短期間で終息するとの楽観論が流れている。オミクロン株に関しては生産制約・人手不足悪化によるインフレ加速効果の方が懸念されるので、市場の利上げ観測も新年に入りFOMC寄りに収斂の兆しが見られる。
再来月の3月には利上げ開始の声も依然強く、次回のドットチャート(FOMC参加者の金利予測分布)発表も3月なので、1~3月には120円も視野に入る市場センチメントが感じられる。外為ビックリシナリオでは、米国のレディットマネーと日本のミセス・ワタナベと個人投機家集団の円売り共闘の可能性も挙げられていた。筆者はその可能性は極めて低いと見るが、そもそもビックリシナリオとして言及されるほどに円売りへの注目度は高いと言える。

なお、FOMCに関しては2021年に投票権を持ったアトランタ、シカゴ、サンフランシスコ、リッチモンドの各地域連銀総裁が交代制で退き、カンザスシティー、セントルイス、クリーブランド、ボストンの地区連銀総裁が新たに投票権を持つ。筆者の注目は、まずハト派の主導格であるサンフランシスコ連銀デイリー総裁が投票権を失うこと。更にカンザスシティー連銀ジョージ総裁とクリーブランド連銀メスター総裁がタカ派ということ。特にジョージ総裁は筋金入りのタカ派である。
加えてボストン地区連銀総裁は現在空席なので、当面フィラデルフィア地区連銀ハーカー総裁が代行となりそうだ。同氏は中道派とされる。
かくして2022年のFOMCはタカ派色が強まる様相だ。
まずは新たに投票権を持つ地区連銀総裁たちの講演や発言などが注目される状況である。

そして金利を生まない金は昨日NY市場で売られたのだ。
円安傾向も変わらず、円建て金価格は下げにくい地合いが続く。

さて、筆者の年末年始はおとなしく自宅にいた。大晦日に自宅で仲間たちと恒例の年越しした程度。本欄でも書いたようにオミクロン株は軽症が殆どだが、爆発的感染力を持つので人口密度が高い日本でも第5波以上の感染者数を記録すると覚悟している。ラッシュアワーの電車に一人でも感染者がいたら、その車両に乗り合わせた人たちは実質的に濃厚接触者となるか。米国でも都市部のNYで感染爆発が生じているが、重症者が少なく危機感が薄い。さすがにインフル程度とは言わないが、エンデミック(季節性ある一般伝染病)扱いになりそう。とは言え感染したら面倒な事にはなるよ。行動制限、頻繁な検査、隔離、医療用マスクなど、人に移すリスクを最小限に抑えねばならない。感染者絶対数が多いから医療も再逼迫するだろうし。そもそも感染したら心理的に落ち込むよね。それに米国人より日本人の方がエンデミックという割り切りができないと思う。許容度の違いだけど地方に行けば、とにかく「コロナ感染者」のレッテルを貼られると村八分状態になりかねない風土がある。

今年の冬は1~2月にオミクロン株が暴れそうなので、筆者の冬の恒例行事である往復上越新幹線でのガーラ湯沢半日スキーも控えようと思う。シーズンロッカーも今年は借りず。一昨年までは年40回以上やっていたので、かなり「スキーしないストレス」が充満しそうだけど。新幹線車内に一人でも感染者がいたり、或いは座席の接触程度でも感染は覚悟せねばなるまい。1~2月オミクロン株が荒れても3月にはピークアウトすることを望む!

2022年