豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 為替介入に伏兵、イギリス発とばっちり円安
Page3600

為替介入に伏兵、イギリス発とばっちり円安

2022年10月17日

14日金曜日の欧米市場で円相場が148円を突破したキッカケは英国債利回り急騰が米国債券市場に伝播したこと。その後ミシガン大学消費者態度指数のインフレ予想観が上昇していることで本格的148円台突入となった。

そもそもはトラス政権が前政権の掲げた法人税19%から25%への引き上げを凍結する方針だったが財政不安が極度に達し、結局法人税増税へ転換した。しかし度重なるUターン(政策転換)に市場は不信感を強め、英国債が再び売られたわけだ。しかも財務相が今年に入り4人入れ替わるというバタバタ劇を見せ付けられた。クワーテング財務相に至っては在任38日で解任。しかもワシントンで開かれていたIMF年次総会出席中に突如退席して帰国という不名誉な展開になった。市場内のトラス首相への不安感は容易に払拭できない。

また、イングランド銀行はインフレ対応の利上げと同時に、市場安定のため投げ売り同然の英国債を買い入れるという量的緩和再開を強いられた。業を煮やした同銀行ベイリー総裁からは11日に「あと3日でリバランスせよ」と危機に直面している英年金危機への最後通告とも取れる発言があった。量的緩和再開は時限措置であり14日金曜日がその期限であったからだ。市場は本日17日月曜日にイングランド銀行が英国債買い入れを継続すると見ている。未だ予定枠の3割程度しか購入していないからだ。しかし「あと3日」という発言は余計であった。あたかも17日からの週には打ち切るとも解釈できるからだ。それゆえイングランド銀行にまで不信感を募らせる。同銀行としては財政政策の失態を金融政策で尻拭いすることになり、不本意極まりないことは理解できる。このようなポリシーミックスのボタンの掛け違いがハイパーインフレを誘発する可能性を秘めることも歴史が語っている。

更に、このイギリス市場の大混乱はドル金利上昇を通じ、円安要因ともなる。「あと3日」発言の時には円相場が146円台を突破。クワーテング財務相解任の後に148円台突破。いずれもドル高亢進が円安に飛び火したという、言わば「とばっちり円安」だ。

さて、本日17日にイングランド銀行は英国債買い入れを継続するか。欧米市場は固唾を飲んで見守っている。アジア時間から欧州時間に移行する日本時間午後遅くから今夕にかけて、取引の薄い時間帯は要注意だ。前回の為替介入もこの時間帯で極めて神経質な値動きになった。

万が一イングランド銀行が英国債買い入れ停止となれば、英国債は再び投げ売られ、利回り急騰が米国債市場にも連鎖して、更にドル高・円安が進行するのは必至だ。それゆえ買い入れ継続と思われるが、その場合は安堵感からドルが売り戻され一時的円高局面に転じる場面も想定される。或いは「あと3日」発言が尾を引き、市場がイングランド銀行に不信感を募らせるシナリオも考えられる。「英民間大手銀行筋はイングランド銀行から国債買い入れを継続すると耳打ちされた」とのFT報道がロンドン市場に流れていることも結果的に「二枚舌」の印象を与えかねない。

この一連の「英国リスク」は為替介入当局も無視できまい。日米金融政策の違いだけでなく、イングランド銀行の方針にまで目配りが必要になった。2元連立方程式が3元連立方程式になったような状況で市場の不透明感は増すばかりだ。

そして、国際金価格は米10年債利回り4%突破とドル高加速で1670ドルから1640ドルまで売られた。引き続き底値圏での乱高下と割り切って見るべき。

3600a.png

先週金曜日には亀井君と池水君の3人で恒例の日経マネー金対談。2023年金展望。なかなか面白かったよ。来月号掲載。乞うご期待!チラ見として、今回は珍しく私が強気で2300ドル。池水君が弱気で1900ドル。亀ちゃんはモゴモゴ語ってた(笑)。それぞれ相場観があるよ。私は円建てで1万円超え予想。

そして、久しぶりに虎屋@東京ミッドタウンで季節の生菓子。

3600b.jpg
3600c.jpg

2022年