豊島逸夫の手帖

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金、下げ止まらず

2022年3月16日

FOMCで利上げが決まる前夜、昨晩の国際金価格は1900ドル近くまで急落した。やはり利上げは金の天敵。

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3月10日付け本欄に「年末には1800ドル程度も」と書いたが、あまりのスピード感に驚いている。
とは言え、このまま下げ続ける地合いではない。
インフレが収まる気配はない。ウクライナ停戦交渉で誰もまともな合意があるとは思っていないだろう。例え合意らしきものが示されても実効性に大きな疑問が残る。

基本的にはFOMC前夜のポジション調整と見る。これまで金を買い上げたヘッジファンドにしてみれば、FOMC前に売り手仕舞いで身辺整理の心境だろう。儲かった分はしっかりいただき、FOMC後にまた新たにポジションを作るというわけだ。

昨日は原油も売られ、WTIはアッサリ100ドル割れ。
それを受けて米株価ダウ平均は599ドル急騰。
中国のコロナ都市封鎖→原油需要減→WTIが100ドル割れ→米株価急騰という風が吹けば桶屋が儲かる式の展開であった。
株外為債券に比し、市場規模が小さな商品市場での投機的売買に株価が振り回されている。

そして明朝はいよいよFOMCで歴史的な超緩和から引き締めへの転換発表。市場は利上げ回数5~7回を織り込んでいる。これを織り込んで金は1900ドルまで下げたとも言える。それでもインフレが抑えきれない場合は金が上がる。

それからウクライナで核の脅威が現実的となり、これまでとは全く異なる形で北朝鮮ミサイル発射が現実味を帯びてきた。独裁者は本当に核戦争をする可能性があることを思い知らされた。中国がロシアのように台湾に攻め入る可能性は低いものの、台湾有事も無視できなくなった。有事に備える金の意味は、いよいよ日本人にとっても考えねばならぬ(考えたくもないが)ことになりつつある。金が2000ドルだろうが、1800ドルだろうが、そういうレベルの話ではない。金のような実物資産で防衛することが重要なのだ。儲ける、損するの話ではない。

さて、今日は英語の表現をひとつ。
いまのようなクレージーな相場を見せつけられた時「It's not pretty!」という。可愛くないという意味にあらず。災害などの惨状を見て発する表現。
目を背け、首を横に振りながら「これは酷い」という感じ。「Bloodbath(血の風呂)」と言うことも多いが、ちょっと下品。
それから下げ相場の中での相場反転を「dead cat bounce」と言うのだけど、これは猫好きの私は絶対嫌な表現。和訳したくもない。「Bear market rally」と言うのが標準的かな。

2022年