2022年1月17日
松山選手がハワイの米国ゴルフツアー競技で優勝した。その勝ちっぷりはまさに「相場師」。攻めるところは徹底的に攻め、引くところは無理しない。
最終日は松山選手と米国人プロの一騎打ちの様相となった。
前半、米国人プロは手がつけられないほどの絶好調。松山選手も好調なスコアなのだが前半戦が終わった段階で5打リードされた。ゴルフで5打差がついて後半の9ホールを迎えると圧倒的に一位が優位だ。しかし最終日の後半はサンデーバックナインと言われるのだが勝負の最終局面なので、一位の選手は二位に追われる緊張感を背負う。
前半は絶好調だった米国人プロも後半に入るや、急に打球がぶれ出した。一位と二位の差が5打から徐々に狭まってゆく。この局面で松山選手は徹底的にアグレッシブな攻撃的ゴルフを見せた。とにかく相手より先に飛ばし、先手を取り、相手を威嚇するゴルフだ。少しでも先を目指せば、当然球筋に僅かなの狂いが生じるだけで、OB(ボールが規定区域外に飛び出し、ペナルティーを課される)リスクがある。ここの判断は投資と同じ。ハイリスクハイリターンかローリスクローリターンか。敢えて距離を抑える安全策も選択肢に入る。ゴルフの場合はOBリスクに対して、どの程度飛距離などのアドバンテージを得られるか、選手は計算して臨む。日曜午後の最終9ホールで松山選手はハイリスクハイリターンに徹し、相手はその気迫に飲み込まれた感じであった。しかも有観客で多くが日系人なので、相手の米国人プレーヤーは米国内なのにアウェー状態であった(因みにマスク無しの人も少なくなかったところは米国流)。
そしてゴルフも投資も勝つには「運」も必要。
試合は延長戦「プレイオフ」に持ち込まれたのだが、そこで松山選手の「神ショット」が飛び出した。残り250メートル先の小さな穴に向けて意図的にサイドスピンをかけ、左から右にスライス気味に打った打球はなんとホールの80センチ傍に落下。その場にいた観客の多くは遠くの松山選手が打った直後、夕方近くの太陽光の中でボールを見失った。その直後一個のゴルフボールが空から降ってきてドーンとホール際で止まった。松山選手も逆光でボールを見失い、思わずキャディーの方を向いてボールの行方を聞いた。遥か先で大歓声が上がったのでナイスショットであることを感じ取った。
土壇場での超美打を現地解説者は「beauty!」(美しい!)と叫んでいた。テレビの画面では標的に向かって飛ぶ打球の美しい長距離スライス弾道が映った。
と、まぁワールド・ゴルフ・カウンシルのふたつの名を持つ筆者も大興奮した(笑)わけだが、松山選手は相場のプロにもなれる側面を見せたのだ。彼は長いスランプの時期も経験した。時として消極的とも見えるプレーが目立ったこともある。プロのトレーダーも同じ。流れに乗れず、もがく時期の方がおそらく長いはず。流れが自分に向かってきた時(勝負の女神が微笑んでくれた時)、逃さず流れに乗り勝ちまくる。その間何をやってもダメな時期もある。そこを堪え心理的に潰れずにいかに乗り切るか。
筆者の金相場のプロとしての生涯成績は平均で8勝7敗だ。それでも勝ち越しを続けることが如何に難しいことか。2連敗すれば3連勝しないと勝ち越せない。筆者のトレーダー時代はとにかくリスクを取れと銀行から指示された。今は行内のリスク管理が厳しくなり「リスクを取るな、アービトラージ(裁定取引)に徹せよ」と規制される。割り切ってしまえば今の方が楽だが、筆者はリスクを嫌というほど取らされたことでプロのトレーダーとして育ったと感じている。コンプライアンスにがんじがらめの状況は正直つまらないと筆者は個人的に感じる。但し堅気の素人衆には先物取引など過度なリスクテイクを絶対に薦めない。地味でも積み立てに徹しろと説い続けている。
ところで話は飛ぶが、トンガ大噴火で世界的なサプライチェーンや気候に新たな変動が出そう。日本でもコロナに加えて大地震リスクが無視できず。金の世界では現物の金塊を自宅の家庭用金庫に保管するリスクが改めて見直されている。