豊島逸夫の手帖

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国内金価格は円安の重要性が今後も高まる

2022年3月18日

ドル建て金価格が1900ドル台でもたつく中、円建て金価格は円安要因が今までに増して重要になる。
今やFRB、ECB、BOE、カナダ中銀など、世界主要国の中央銀行が利上げに動く中で、本日金融政策決定会合が開催される日銀だけは周回遅れどころか、利上げなどとてもできる環境にはない。金利差で円は売られ、ドルが買われる傾向は、ドル建て原油輸入額が国際収支赤字要因となることもあり、今後も続きそうだ。
不気味なのはこの日銀も傍観するしかない円安傾向に目を付けたNY市場の国際通貨投機筋が、円売り・ドル買いの仕掛けに集中する可能性が出てきたことだ。もし米国の大型投機マネー集団が一斉に円売りを仕掛けたら、数日で2~3円は円安方向に動かせてしまう。
NY市場で断トツの通貨ペアはドルユーロで、ドル円は後塵を拝する。つまり流動性が限定的ゆえ動かせやすいのだ。しかも日本側はNYの動きに連動する傾向がある(日本人として情けないことだが)。
日本の外為アナリストは理論立てが上手だから「ああのこうの」と理屈を並べている内に、「行動あるのみ」の米国側がドル円価格主導権を把握してしまう。結果的に日本人は朝起きたら円相場大台突破とかでビックリするだけだ。

2021年10月の時点で、NY市場の雰囲気を察した筆者があちこちに118円説を書いた時、日本の主流は115円まで到達するにはハードル高しという見解だった。実質実効為替レートなどを持ち出し、それとの乖離などを論じ、円安行き過ぎなどと説いていた。思わず「あなたには行き過ぎかもしれないけど、全く違った価値観で売買する人たちが、NYでは更なる円売りに動く気配だよ」と言ったものだ。
更に、長期的に為替レートは国が稼ぐ力で決まる。残念ながら少子高齢化で、移民も拒む日本の企業は、米国企業のダイナミズムには勝てない。願わくは日本の優れた技術力を持って、日本にも米アップルやグーグルのような大企業が出現して欲しいのだけど。

まぁ個人ではどうにもならない話なので、かねてからセミナーでも話してきたように、私は財産の半分をドル建て資産(含む金)で運用している。自らプロでリスクを痛感しているから、FXなどという投機は一切やらない。プロの個人資産運用は地味なものだ。
外貨アレルギーの強い日本人には、ドルやユーロと言っても為替リスクが怖いと言うが、私は円だけを持つリスクの方が怖い。円安で円の購買力が50年ぶりの低さに低下していることの方が怖い。それでも日本人の多くは「円なら安心。外貨は不安」と言う。資産を円だけで持つリスクも考えるべきだろう。20年後、日本の通貨は人民元になっているかも。そういう歴史を多くの国は経てきているのだ。日本は元寇の時「神風」(台風)が吹いてくれて助かったけど、あれはラッキーだった。でも今回のウクライナ侵攻で、台湾に中国人民解放軍が侵攻という有事や北朝鮮ミサイルが日本領土内に落下など、これまでは「まさか」と思われていたシナリオのハードルが低くなった。
金価格が1800ドルに下がったとか、2000ドルに上がったとか、短期的な話ではなくて、長期資産としての金も、これからが日本における本格デビューだと感じている。

2022年