豊島逸夫の手帖

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フィンランド、スウェーデンのNATO加盟

2022年5月17日

これは筆者も驚いた。北欧もNATO加盟に動いたことでプーチン大統領は欧米との対決姿勢を更に強めている。外交面での大きな変化であり、追い詰められたプーチン大統領は更なる対抗措置を検討している。

筆者はこの世界的パワーバランスの大きな変動が、新たな「有事に備える金」への動きを促進させると重要視している。
ウクライナ戦況だけでは相場の材料として陳腐化したが、ここに新たな材料が出来した。
とは言え、これで直ぐに金買いというような話ではない。
中長期的に米露新冷戦が悪化する要因として見るべきだ。

筆者が「長期的には金価格が3000ドルに達する」と見ていることに変わりはない。その見解をサポートする材料である。本欄で繰り返し記してきたように年内の金価格上昇については慎重派だが、長期的にはブル(強気派)だ。

なお、短期的には株も商品もビットコインも金も売りが目立ち、唯一買われているのが米国債だ。ドル金利は下がり、ドル金利急騰は一服状態である。

円建て金価格の変動はNY金安とドル安の両面で下げ幅が増幅されている。これまではNY金高、ドル高のダブルで円建て金価格が史上最高値を更新したが、その反動が生じている。

金とドルの関係も短期的にはドル高が金の売り材料にされることもあれば、買い材料にされることもある。結局トレーダーのポジション次第で都合の良いように後講釈される。教科書的発想は頭の中のハードディスクから消去すべきだ。ベテランほど過去の経験則に頼る傾向があるからご用心。

これまで筆者は「有事の金」も軽視してきたが、米露新冷戦エスカレートに至って、以前より重要視するようになった。殊に日本人にとっては有事の備えが必要な時代となった。但し相変わらず「有事の金」をセールストークに使う事例は絶えない。ここは業界のコンプライアンスを強化すべき点である。

なお、長くマーケットと接していると市場環境の変化に対して柔軟に対応することが重要である。思考が柔軟なはずの若い世代でも思い込みが強く、環境の変化に順応できない人たちが多い。もって銘すべし。

2022年