豊島逸夫の手帖

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クレディ・スイスの危機、10月27日に再建案発表へ

2022年10月26日

クレジット(信用)リスクがシステミックリスクになる可能性が生じると、「市場安定」のためFRB利上げが中断されるシナリオもある。これは賞味期限付きの円高局面を招く可能性を秘める。

そこで引き合いに出されがちなのが財務不安説の流れる金融大手クレディ・スイスだ。筆者が在籍したSBC(スイスバンクコーポレーション)のライバル行であった。因みにSBCはUBSと合併。そのトレードマーク(3つの鍵)がUBSのトレードマークとして残っている。そのクレディ・スイスはどうなるのか。

結論から言うと国際金融業はスイスの数少ない基幹産業であり、大手のスイス系銀行は実質的な国策銀行だ。何があってもスイス政府が守るのは必定だ。特に欧州のど真ん中に位置して、歴史的にも他国からの避難民の末裔(まつえい)が少なくないスイスは排他的傾向が強く、その反動で自国企業への関与は強い。銀行内の風潮も国内派が実権を持ち、国際派が主流派とはなり難い。

そのような企業環境でクレディ・スイスの米国中心のインベストメントバンキング部門の行内独走が起こった。

しかし、世界の大手金融機関のインベストメントバンキング番付を見るに、JPモルガン、ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレー、シティーの米系5社の事実上寡占状態となっている。6位以下にスイス系、ドイツ系、英国系の名前が並ぶ。日本系の名前は見当たらない。米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントの一件でスイス系と日本系の金融機関が特に巨額の損失を計上したことと符合する。

今回のクレディ・スイス財務不安説もインベストメントバンキング部門が火元のようで、同行の最高経営責任者(CEO)が指定したⅩデーの10月27日には社内で大規模なリストラが発表されるようだ。筆者存知の行員たちも戦々恐々としている。優秀な人材は既に見切って新たな道を模索している。

財務的には市場が恐れていた問題の勃発は極めて考え難い。ニューヨーク市場でも高い信用力を持つソースが、ケルナーCEOが最優良顧客向けに配布したとされる財務数値一覧を精査した上で「システミックなリスクは無し」と判断している。既に30億ドル相当の社債買い戻しも発表している。

とは言え、時が時だけに市場は銀行の経営安全性にも注視せざるを得ないことも事実だ。顧客の個人資産情報につき、米税務当局が調査中との報道も流れており、CDS(クレジットデフォルトスワップ)は回復したものの安定しない状況だ。

簿外資産とかシャドーバンク(銀行免許を持たぬ金融会社)などは銀行監督の管轄外にありリスクが把握し難い。低金利時代に英国年金がデリバティブに、しかもレバレッジをかけて運用していたが、ひとたびマネー回収の時代となるや巨額の損失を蒙る結果となった事例が象徴的だ。過剰流動性の時代からマネー収縮の時代への過渡期に思わぬシステミックリスクが発覚する可能性はある。市場も身構えている。

さて、明日10月27日午後5時半から開催予定だったYouTube豊島逸夫チャンネル「ゴールド・セミナー」が延期となった。筆者のYouTube機材が慣れぬことでフリーズしてダウンしてしまった。すぐに修復可能だが確約できないので延期とする。

今日の写真は、京都で東寺訪問。
柄にもなく、しおらしく、写経セットや白檀の千手観音菩薩(護持仏)を買い込んだ。
3606①(東寺).jpg

3606②(護持仏).jpg千手観音は減罪のご利益があるそうで、罪深いことを人生で重ねてきたことへの反省?もう時既に遅しか(笑)。
それにしても東寺で国宝・重文級の仏像がずらり並ぶ様は迫力がある。

2022年