豊島逸夫の手帖

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米インフレ期待率低下、円安継続論に一石

2022年7月25日

6月米消費者物価上昇率9.1%という所謂CPIショックで降って湧いたような7月FOMC1%利上げ説。9%台のインフレを退治するためにはFOMC会合ごとに0.75%程度の利上げでは手ぬるい。ここは1%利上げが必要なのでは。そのような声が市場内に誰ともなく芽生えたところで、アトランタ連銀ボスティック総裁が「点検の上で何でもあり得る。」と述べた。肯定をほのめかす発言と受け止められ、米国大手金融機関が相次いで1%予測に切り換えた。

ところが、その後のFRB高官発言ではセントルイス連銀ブラード総裁やウォラーFRB理事など数名のFOMC参加者が相次いで「0.75%で可」と発言。更に金曜日発表の7月ミシガン大学消費者調査(速報)で消費者の5年後のインフレ予測が2.8%と6月の3.1%より低下したことで、利上げ幅エスカレート予測には待ったがかかった。6月FOMC時の土壇場で0.75%利上げが決まった理由のひとつとして、消費者が見るインフレ率が重視されていたからだ。この直前の利上げ幅変更はFOMC会合前の参加者発言自粛期間(ブラックアウト期間)に決まった。それゆえ今回も7月FOMCが今週から同期間入りしたことで、市場では暗中模索の感が強まる。同期間入り直前のFRB高官発言をどこまで信じて良いものか。

因みにブレークイーブンインフレ期待率(5年)は4月の高値3.5%台から直近では2.6%台にまで低下している。

なお、市場ではFOMC会合ごとの利上げに一喜一憂するのではなく、年末までに政策金利がどこまで上昇するかという視点で考えるべきとの意見も根強い。7月も0.75%利上げとなれば、政策金利はこれまで中立金利とされていた2.25~2.5%のレンジに達する。年内9、11、12月と、あと3回のFOMCを残すので、12月には政策金利が4%近くまで上昇する可能性が強まる。

年初のゼロ金利水準から1年で超特急の利上げ。これに9月以降はQTも本格化する。劇薬投与とも言える強硬策に市場では副作用としてのリセッション入りの予測が益々増えてきた。

ドル高円安についても「今回は円売りで大儲けさせてもらった。」と語るヘッジファンドから、140円が視野に入ったところで年内いつpause(一回休み)ボタンを押すかとの議論がチラホラ聞かれるようになった。

時あたかも2023年にはリセッション入りを前提に早くもFRBの利下げが意識されている。9月発表のFRB四半期経済見通しに含まれる最新ドットチャートの形も2023年の金利予測水準中央値が2022年を下回る可能性が指摘される。2022年分が全体的に切り上がり、2023年分が切り下がるとの予測だ。

金利水準の逆転と言えば逆イールドもこれまでのドル長短金利差がプラス圏とマイナス圏を行き来する状況から、明確にマイナス圏に留まり、マイナス幅も増加傾向が顕著である。

日銀の金融政策は引き続き変わらず、9月にはFRBが2023年に利上げから利下げに転じるシナリオがより強く意識されれば、積み上がった投機的ポジションの表層雪崩で10円規模の円反騰が生じても不思議はない。とにかく逃げ足は速いマネーが主導してきた円安である。円安の構造的要因は変わらないがさすがにスピード調整の局面は覚悟すべきであろう。

さて、連休終わって帰札。やはり札幌は涼しい。感染急拡大ゆえ外食を控え、旬の魚介類やメロンを買い込み部屋で夕食。メロンはそろそろ熟し始めた頃が一番旨い。その時期を超すと熟れ過ぎとなる。売り場でも熟してヘタが取れた夕張メロンは3割引きとなる。それでも東京に出回るメロンとは全く異なり、とにかく旬の味だ。個人的には「らいでんメロン」がお気に入り。中玉を一気に半分くらい食べてしまう。と言うわけで、札幌サテライトオフィスで仕事再開である。今日の写真は機中から撮った富士山。

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2022年