2022年2月10日
昨日のブログは素っ気なかったが今日はガッツリ系。かなり専門的ゆえ読み流しで結構。
市場が警戒する1月米国消費者物価指数発表の前夜9日、国際金価格はじり高が続き1830ドル台。ドル金利が1.9%台で低下。市場ではインフレ楽観論と好調な米国10年債入札結果が注目される。
9日にはFRB高官発言も材料視されたが注目はその解釈だ。
アトランタ連銀ボスティック総裁は「3回から4回の利上げ」を見込む。利上げ幅予測に関しては0.25%刻みに留めている。タカ派とされるFOMC参加者の発言としては市場にとって意外感がある。今や年内4回以上の利上げを織り込みつつあり、3月、5月の利上げ確率はほぼ100%に達しているからだ。本日発表の1月消費者物価指数も事前予測では年率7.2%と12月の7%を上回る数字が市場に流れ懸念されているが、同氏は月次で0.5%から0.4%へ下落が予測されている方が懸念だと語っている。仮に月次減少傾向が続けば、インフレは年内に緩和傾向となり、FRBもタカ派姿勢を弱めるであろうとも述べているのだ。金市場は利上げ慎重なハト派なら買い。
ボスティック氏より強いタカ派と位置付けられるクリーブランド連銀メスター総裁の発言も注目された。利上げにもQT(FRB資産圧縮)にも積極的で、そのタカ派ぶりがメディアではしばしば見出しになる。
しかし、同連銀のHPに掲載された長文の講演原稿を精査すると「0.5%刻みの利上げを正当化するほどの状況とは思わない。インフレ動向を注視しており、鈍化傾向が見られれば、利上げ回数は減るであろう。」とも述べ、発言にしっかりヘッジをかけている。QTに関しては住宅担保証券をアウトライト(直接)に売却することを論じて注目された。償還期限満期の保有債券分を再投資せず自然減で総資産を圧縮してゆく方法よりアグレッシブ(積極的)な引き締めだ。但し米国住宅市場は既に過熱状態なのに、FRBが2.7兆ドルもの住宅担保債券を購入保有し続けていることが、そもそも経済合理性を欠く。住宅ローン金利上昇に歯止めをかけることは健全な消費性向を高める。
メスター、ボスティック両氏に共通することは結局データ次第、オミクロン株次第で決めるということだ。特に年後半の利上げ回数となると「全てのFOMC会合がライブであり、リアルタイムに決める。」とのパウエル発言に歩調を合わせる結果になっている。注目されるドットチャートもFOMC参加者の金利予測分布を示すが、あくまでも四半期ごとの参加者個人的な予想に基づく数値に過ぎない。かくして経済環境が流動的ゆえFRBもフォワードガイダンス(金融政策の方向性を明示する指針)を出せないことが、市場のボラティリティー(変動性)を激化させる傾向は変わるまい。
次に、ドル金利動向だが9日には長期金利が1.9%台前半と前日に付けた2019年11月以来の高さ(1.97%)からは低下した。
その要因として370億ドルの10年債入札が好調で1.904%で落札したことが挙げられる。特に外国勢の米国債購入が7割程度を占めたと米国経済テレビ局CNBCは報じた。
やはり米国債には安全資産としての買いが根強く、特に政府系ファンドや年金、更に外貨準備の資産としては一定の需要が見込まれる。保険・年金関連の日本勢の売買状況も米国債変動要因として常に注目されている。
なお、FRBが見る中立金利(経済に過熱的でも冷却的でもない金利水準)が2.5%とされるので、10年債利回りも2%を突破すれば、そろそろピークアウト近しとの見解も市場では根強い。ゼロ金利解除と言っても歴史的な低金利状態は続く。BEIが2.4%台に沈みインフレ期待感が薄いと言えど、ドル実質金利はマイナス圏が続き、金には追い風となろう。
加えて、2年債と10年債の長短金利差は更に縮小して、イールドカーブは平坦化が進行している。これはFRBが引き締め転換に出遅れ性急に利上げを加速させることで景況感が悪化するシナリオを映すので、株式市場は歓迎できないがリスクオフになれば金には追い風となる。
今週に入り米国株価波乱も一服。決算後の売りが続きVIXに代わる恐怖指数扱いされたメタ株価も9日には久しぶりに反騰した。
しかし、CPIの発表数の解釈次第で株も金も未だ乱高下が続く可能性がある。筆者は積極的に発言するタカ派に対して、沈黙を守るハト派の意見を聞いてみたい。NY連銀ウイリアムズ総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁、シカゴ連銀エバンス総裁、そしてFRB理事時代には超ハト派のスタンスを取っていたブレイナード新副議長(議会の承認待ち)の発言が、どの程度タカ派色に染まってるのか。
9日にはボストン連銀新総裁にミシガン大学コリンズ教授の起用も発表された。前任のローゼングレン氏は個人的株式投資が問題視され辞職して空席になっていたポストだ。