豊島逸夫の手帖

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経済制裁もインフレも「生かさず殺さず」

2022年3月1日

28日のニューヨーク株式市場は前日比500ドル超急落後、引き際にかけて買い戻され、166ドル安で引けた。VIX指数も警戒域の30前後で高止まりだが、40以上の危機的水準には達していない。そして国際金価格も1900ドル近傍で推移している。第一波の時の最高値1970ドルには遥かに及ばない。

振り返れば今回の強硬経済制裁が誘発したウクライナショック第二波は、最も不透明感が強く材料の消化にも手間取った日本時間28日日中がピークとなった感がある。ロシア中銀のドル取引禁止まで踏み込んだところで経済制裁の限界も見えてきた。基本的に「生かさず殺さず」が経済制裁の勘所。現在以上のサプライズがあるとすれば、四面楚歌に置かれるプーチン大統領が核兵器威嚇を強化するシナリオか。

そもそもロシアの経済規模は韓国並みで、信用収縮の世界的連鎖リスクは限定的だ。原油依存体質なので原油価格変動リスクが突出する。しかし原油先物市場のゼロサム体質が価格変動を増幅しているので要注意だ。原油トレーダーも経験した筆者の視点では、70ドルを超したあたりから、誰かが儲かれば、誰かが損する価格形成の脆弱性が際立つ。ウクライナ関連要因が殊更に囃されている気がしてならない。しかも現在の原油市場では大きな売買注文が飛び込んだ時に、自らのリスクで仲介役となるべき大手投資銀行のトレーディング部門が機能不全状態である。ドッドフランク法で骨抜きにされたからだ。庶民の生活を直撃する油の値段が投機筋の動きで乱高下することを回避するため、市場の規制を強めたことが裏目に出ている。

ここまで強い投機色が露呈するとマネーの米国債・円・金への逃避現象にも巻き戻しが入り始める。第二波の米国債買いが集中・加速して、28日の米国債利回りは急落した。しかしイールド下落のモメンタムに乗って一儲けを目論み米国債買いに走った短期投機筋は早くも出口を模索している。この短期トレードの賞味期限は今週最大のイベントとされるパウエル議長議会証言(3月2・3日)までとされるからだ。

そのパウエル議長も金融引き締め開始宣言にあたり「米国経済を生かさず殺さず」の綱渡りを強いられている。28日にはアトランタ連銀ボスティック総裁が「今日の段階で私は3月0.25%幅利上げを依然支持する。しかし状況は週ごとに変わりつつある。私が特に注目するのはインフレ指標の月次変動だ。その数値が高止まりするようであれば0.5%幅利上げもいよいよ検討せねばなるまい。」と語った。この外電ニュースの見出しは「ボスティック総裁、0.5%利上げを排除せず」なのだが、0.25%幅も排除していない。最後まで揺れるFOMC参加者の本音が透ける。

結局パウエル議長を追い詰めると利上げという武器の着弾点を誤りスタグフレーションのリスクが生じる。
プーチン大統領を追い詰めれば核兵器発射のテールリスクが無視できなくなる。
かたやインフレ対策、かたや経済制裁。どちらも「生かさず殺さず」の案配が難しい。

さて、ウクライナ相場も本格的に動くのはNY時間。相変わらず昼夜逆転の生活だけど、NY市場引け後、暖かさに誘われ、池上の梅園にマガーリ産ワンちゃんの豆助とナッツたちと行ってきたよ。五分咲きくらい。猫は猫ロスになるぐらい馴染んでいるけど、ワンちゃんの散歩は初めて。どうも猫飼いの習性か、道路の歩道でいきなり左前45度の車線にジャンプしそうで恐る恐る。猫と違って、ひたすら前進してくれるのが分かった(笑)。撫でて欲しいところは、やっぱり犬も顎の下とか耳の裏とか、ほぼ猫と同じかな。まぁ花より団子と言うけれど、結局花よりタイ焼き、桜餅、ドルチェ~~~。

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2022年