豊島逸夫の手帖

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米インフレ、ピークアウトの兆しか

2022年530

先週金曜日にFRBが最も重視する米個人消費支出(PCE)インフレ率が発表され、鈍化傾向が確認された。
同指標は2021年11月4.7%、12月4.9%、2022年1月5.2%、2月5.3%、3月5.2%と推移してきたが、4月は4.9%と発表された。
因みに消費者物価上昇率も年率8.3%で8か月ぶりに鈍化している。

ニューヨーク連銀による「米消費者の1年先の期待インフレ率」も家計のインフレ実感度として重視されているが、これも中央値で0.3ポイント低下して6.3%となっている。

これら統計を背景にFRB強力利上げがインフレを抑え込むのではないかとのインフレピークアウト説が流れる。
地区連銀総裁レベルでも9月FOMCでは利上げ1回休みを唱える事例も出てきた。

筆者はこの程度のインフレ指標逓減でインフレピークアウトを語るのは時期尚早と考える。絶対値が依然高水準だからだ。FRBが制御できない商品価格高騰(供給サイドのインフレ)もCRBコモディティーインデックスが318.66と、9年8か月ぶりの高水準を付けている。この指数は中央銀行もウォッチする重要指標だ。

注目すべきは需要サイドのインフレ抑え込みまでは良いのだが、抑え込み過ぎて景気後退を招くシナリオだ。
インフレを首尾よく抑え込み、しかも不況は誘発せず、所謂「経済軟着陸」に成功すれば、インフレヘッジとしてもデフレヘッジとしても金の出番は減る。
対して軟着陸できず、景気後退を招くとなれば、金は買われやすい。
全てはパウエルFRB議長の金融政策手腕にかかる。
パウエルさんを信じられれば金は売り。信じられなければ金は買い。
だからこそ本欄でもパウエルさんが頻繁に登場するのだ。

なお、景気後退懸念でドル金利上昇に歯止めがかかり、足元ではドル安傾向になっている。これは金が買われやすい市場環境だ。更に短期的ながらドル安・円高に振れやすい。しかし円安の構造要因は変わらない。黒田さんの国会での発言が東京の外為市場では材料視されて円高に振れる局面もあったが、ミスタークロダの威光が効くのは東京市場だけ。NY市場ではスルーされている。円は日本の通貨だが、日本株同様、外国人投資家の影響力が強く、円相場の大台突破も日本が寝静まった深夜に起こることが多い。自分の国の通貨価値まで外国人に荒らされるのは日本人として情けない。

さて、今日の写真は米国から送られてきたサクランボ。もうそんな季節になったかという感じ。恒例の山形サクランボ狩りもそろそろ予定を組まねば。


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2022年