豊島逸夫の手帖

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火星着陸級の難度、米国経済の軟着陸

2022年33

注目のパウエル議会公聴会発言。徹夜で最後まで視聴した。
「インフレの潮目の変化を、自信を持って宣言することはできない。」
筆者の印象に最も強く残ったパウエル氏の言葉だ。長時間に亘る議員たちとの質疑応答の中で、思わず口をついた本音と見た。
同氏は今回のインフレを「強い消費者需要とコロナ由来の生産流通制約の激突」とも表現した。インフレを放置すれば不況と物価高の同時進行という米国経済ハードランディングのリスクがある。

この未知の新型複合インフレを利上げとFRB資産圧縮の合わせ技で抑え込み、米国経済のソフトランディングに成功することは火星着陸級の操縦技術を要する。しかもインフレが軟着陸したことを直ぐには自信を持って宣言できない。金融政策の効果発揮にはタイムラグがある。同氏は「金融政策は自動操縦ではない」とも語り、キャプテンとして海図なき航海に乗り出す決意を表明した。市場はハラハラと見守る以外に術はない。シートベルトを低めに締め、着陸の衝撃に備えることになる。しかもウクライナ方面から流れ弾のリスクもある。同氏は「(ロシア経済は)米国経済と距離がある」とも述べた。「(ウクライナ問題は)極めて不透明」とも認めている。

その上で3月15~16日開催FOMCまでの2週間に大きな変化がなければ、3月利上げに踏み切るという姿勢である。
利上げ回数に関しては、FOMC声明文と同時に発表される最新FRB経済見通しの中に含まれるドットチャート(FOMC参加者の金利予測分布)を待つことになる。パウエル議長と言えど、そのチャートではひとつのドット(点)に過ぎない。毎回市場の雀たちはどのドットがパウエル氏か、当て推量に興じたりするものだ。なお0.5%幅利上げについてはパウエル議長自らその可能性を認めたことでひとつの選択肢として認知されたと言える。

総じて、今後の視界不良の状況に「機動的=nimble」に対応するため、パウエル議長はほぼあらゆる選択肢を温存した。

2日には地区連銀総裁たちも独自に声を上げた。
シカゴ連銀エバンス総裁(ハト派)は3月FOMCから3回連続利上げ後に、点検の上で更なる利上げも考える姿勢を語った。「6月までには地政学的環境も今より視界が開けるであろう。」とも述べている。

FRBのインフレ対応が遅れたことを語ってきたセントルイス連銀ブラード総裁(タカ派)も発言。「FOMCの擁護をさせてもらえば、我々は眠っているわけではない。」とやや皮肉めいた表現を使いこれまでの持論を述べた。

なお、今回の議会公聴会ではパウエル氏の肩書が「臨時議長」と明記され、議員たちからも「臨時議長」と呼ばれていることが印象的であった。議会側からの「議長職正式承認はこれから」とのメッセージと映った。

金市場の反応だが、事前に「3月利上げ見送り説」がNY市場に出回っていたので、条件付きとは言え3月利上げを明言したことは金利を生まない金への逆風となった。KITCOグラフ緑線で示されるように1920ドル台まで下落。昨日は上がってもこの程度かと書いたが、今日は下がってもこの程度か(笑)。
徐々に値固め進行中となりそうだ。

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さて、今日は10秒ほどの動画。

ニョッキ製造中

マガーリのシェフ、たかさんが黙々とニョッキ製造中。ジャガイモを裏漉し中。あまりジャガイモを引かずにグルテン(粘り成分)を出さないのが彼の流儀なのだとか。こういう過程を見ると無性に食べたくなるニョッキ~~。味付けのバリエーションも色々ありそうだな~。マガーリもまん延防止等重点措置終了に備え、ビニールカーテンで仕切りを入れたらしい。最初は診察室みたいで違和感あったが、今やどこでもこれだからすっかり慣れた感。
そろそろ筍の季節も視野に入るから、ご無沙汰の京都のらく山にも行きたいよ。
今年の冬は札幌の冬が旬の「タチ」(タラの白子)も食べず仕舞い。あればかりは生の鮮度が勝負なので東京では無理。とは言え、あの大雪で「千歳空港に一晩仮眠」の報道を見ると足も鈍る。

2022年