豊島逸夫の手帖

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146円突破のキッカケはこれだ、英中銀、年金危機に最後通告

2022年10月12日

11日の米国株式市場は、久しぶりにダウ400ドル超の急騰で下げ一服感に安堵していた。ところが日本時間午前2時以降、事態が一変。ダウはまたたく間に400ドル以上急落。引き金を引いたのはイングランド銀行総裁であった。英国年金危機に痺れを切らせ、「3日の間にリバランスせよ」と事実上の最後通告を突き付けたのだ。英国年金基金は袋小路に立たされている。低金利時代に安定的リターンを達成するため、低水準の変動金利で運用して、年金受給者に一定の給付をするため固定金利にスワップした上で運用成果を出すことが必要となった。ここで使われたデリバティブが金利スワップ。しかも低金利下で運用成果を出すためにレバレッジを5倍以上掛けた。このデリバティブの弱点は金利が急騰すると損失も急拡大することだ。その恐れていた事態が9月28日に「イングランド銀行ショック」という形で露わになっていた。年金は損失を埋めるために保有する英国債を投げ売り同然の形で市場に放出。しかも銀行からの融資の担保に差し入れていた英国債まで、急速な債券値下がり(金利急騰)による追加担保(マージンコール)を支払うため売らざるを得なかった。年金運用を保全するため英国債を売れば売るほどマージンコールが膨らむ。英国年金は袋小路に立たされた。時限的措置としてイングランド銀行はインフレ抑制のための利上げと同時に、年金救済のため英国債購入(量的緩和再開)という矛盾した金融政策を強いられた。しかしここに至って堪忍袋の緒が切れた様相だ。「3日間のうちにリバランスせよ」と事態収拾を迫るが、年金側に妙案があるはずもない。結果的に英国年金危機のリスクが強調されることになった。この不安感は既に神経質に揺れていた米国債券市場にただちに伝播。米10年債利回りが3.8%半ばから3.9%半ばまで急騰。ダウは400ドル規模で急落したのだ。米国市場の不安定性も浮き彫りになった。全てはFRBの金融政策が読めず、しかもFRB自身も読めていないことに尽きる。まずは13日発表のCPIにFRBも市場の次の一手のヒントを求める。

なお、ドル金利上昇で円安も進行。いよいよ新黒田ラインとされる146円を巡り、ヘッジファンドと日銀のせめぎ合いが始まる可能性に現実味が増す。NY時間に入ると、ヘッジファンドに日銀への忖度はない。日銀円安抑制にも思わぬ伏兵が現れるという成り行きだ。

そして、金も1660ドル台で推移している。

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なお、この顛末は早速、今朝7時過ぎにYouTube豊島逸夫チャンネルで緊急解説した。

英国年金危機、NY市場にも伝播、株急落の引き金に

2022年