豊島逸夫の手帖

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暇を持て余すNYのトレーダーたち

2022年5月31日

プーチン大統領、そしてパウエルFRB議長の本音が読めず、まともなNYのファンドはひたすら現金保有を増やし、模様眺めに徹しているので、多くのトレーダーたちはただ座っているだけだ。

それゆえ筆者が電話すると「待ってました」とばかりに長話になる。1時間程度の会話時間が普通になってきた。話題も相場関連は語り尽くされたから、専らプライべートの趣味の話とか夏休みの計画などが多い。

長話の最中にも相場は荒れて、大きく乱高下しているのだが、もはや気にもかけない。「小者たちが相場を荒らしているわい」という程度の反応でスルーしているのだ。

確かに最近は日中の価格変動は激しいのだが、1週間とか1か月で見ると殆どレンジ内の動きで、基本的に上げの日と下げの日で相殺されている。
その実態を知らないアナリストたちが何とか理屈付けをしようと試みているが、所詮エクセルシートと睨めっこしてもマーケット最前線の動きはわからない。その結果現場感覚から遊離した「珍説」が横行している。個人投資家はそのような裏の事情など知るべくもないから、その「珍説」をまともに受けて騒いでいる。虚しい。これで得するのは業者だけだ。

個人投資家の「ツワモノ」たちはそれでもめげず、自分だけ相場の真理を発見しようとあれこれ考える。世界中で誰も読めないことを自分は読み切り、自分だけが大儲けするという夢に取り付かれている。

「悪い事言わないから休むも相場だよ」と諭しても、「いや、自分だけ儲けるのだ」との決心は固い。筆者は「それならどうぞ、気の済むまでおやりなさい」と言うだけだ。
こんな状況に出くわすことが少なくない。
結果的に大儲けする人もいるし、大損する人もいる。所詮丁半博打だ。
それゆえ筆者は個人投資家には「地味だが、積み立てに徹しろ」と説いているわけだ。

一方で機関投資家とのミーティングが最近は激増している。横並びの世界ゆえ一社が検討を始めたとの情報を掴むや、先を越されては一大事ゆえ他社も検討を始める。金を買うべきか否か。

機関投資家の数は多く、決してセミナーなどにノコノコ出てこないので、個別に会議室でのスモールミーティングが殆どだ。これはこれで回数が多く、筆者は連日謀殺され、暇なNYの連中に「なぜJeff(私のニックネーム)はそんなに忙しいの?」と訝られている。筆者は自分の貴重な体験を後輩たちに伝えてゆくという気持ちなのだが。夏季は例年札幌のサテライトオフィスに移るが、今やZoomとか便利なシステムがあるので、いくらでも仕事ができてしまう。便利なようで困ったものだ。

それでもやっぱり自分はマーケットが好きなのだ!連続ドラマの続編見たさに結局連日市場をフォローせずにはいられない(笑)。

以上、近況報告。頑張ります!

2022年