豊島逸夫の手帖

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北朝鮮ミサイル撃墜可能性は? NY金市場が関心

2022年10月6日

北朝鮮ミサイル日本上空通過の報はNY市場でも潜在的地政学的リスクとして話題になっている。ウォールストリートジャーナル紙も社説で論じた。1962年ソ連が核ミサイル基地をキューバに建設した「キューバ危機」を想起させ、キューバからのミサイルがフロリダ半島上空を通過するようなものと語る米軍事評論家もいた。
存じ寄りのニューヨーク金市場の若手トレーダーからも「日本が北朝鮮ミサイルを撃墜することはないのか?」とストレートな質問が飛んできた。目論見は透けている。「有事の金」と囃してレンジ上限の突破に動く腹積もりなのだ。国際金価格は1600ドル台で今年の最安値を付けた後、ドル金利・ドル相場反落により1700ドルを再突破した。しかしその後が続かない。何か新たな材料を模索しているところに北朝鮮ミサイルの報が飛び込んだ。「有事の金」という「おあつらえ向きの買い材料になり得る」と読んだのであろう。
話せば日本の平和憲法も知らず、日本に関する知見も極めて薄く、筆者はまともに対応する気にもならなかった。

なお、これは個人投資家への警告にもなる事例だ。
近年金市場は地政学的リスクに反応しない傾向がある。ドル高になると有事のドルとの声も聞こえてくる。
とは言え、さすがにロシアが核兵器使用ともなれば、伝統的に金選好度の高いドイツやスイスを中心とした欧州金市場では「有事の金買い」の現実味が増すであろう。
しかし、一般論としてプロの感覚では有事の金は売りである。地政学的リスクは短命に終わることが多く、金を買い持ちなら吹き値売りの恰好の機会になるのだ。過去の事例でもイラク戦争開戦後に金価格は下落した。これは「噂で買ってニュースで売る」の典型事例であった。金市場の「中東筋」が予めイラク開戦必至と読み、買いポジションを増やしていた。そこに開戦のニュースが飛び込むと彼らは一気に利益確定売りに走ったのだ。一方で有事の金の報を聞き即新規買いを入れた個人投資家は高値掴みの憂き目を見ることになった。
そもそも個人投資家にとって金は有事に備え、平時から現物をコツコツと買い増しておくことが本筋だ。その原点に筆者はスイスで遭遇したことがある。たまたま同僚のスイス人トレーダーの自宅に招かれた時、夕食後に奥さんが分厚いアルバムを見せてくれた。そこには娘さんの誕生日ごとに、誕生日の写真と一枚の金貨が各ページに貼られていた。7歳だったので7つの成長の記録写真と7つの金貨。これを嫁ぐ日まで続け、嫁ぐ前の晩に母親が「嫁ぎ先に何かあったら、この金貨を売って凌ぎなさい」のメッセージとともに娘にプレゼントすると言う。トレーディングルームで金を売ったり買ったりの虚しい日々に明け暮れていた筆者は、これこそ「有事の金」の原点だと感じ入ったものだ。有事は何も戦争だけではない。家庭内有事もあるのだ。嫁ぐ娘を案ずる母の愛情がこもったアルバムを見て感激。目がウルウルしてしまった。それ以来筆者は金には資産価値だけではなく、感情価値(センチメンタルバリュー)があると論じるようになった。もしそのアルバムに国債とか(当時の)株券が貼られていたらどうであろうか。触れればヒンヤリするが金貨だからこそ贈る側の熱い愛情が伝わる。
これこそゴールドの原点なのだ。

それにしても北朝鮮ミサイルが日本上空通過の後で、韓国側からミサイル発射と続くと、かなりヤバイ雰囲気だよね。自然な成り行きで日本国内でも「有事感覚」が強まっていることを感じる。
札幌サテライトオフィスのある北海道では「ロシア侵攻危機」の論調も見受けられ、実際にロシア侵攻リスクヘッジのために金を買う事例も複数耳にした。沖縄や九州では台湾有事の流れ弾が気になる。日本海側では特に北朝鮮ミサイルが気になる。嫌な時代になった。同時に陸続きの国境がない日本の「平和ボケ」的雰囲気が明らかに変化している。

最後に、雇用統計ライブをYouTubeでやるけど、日本時間午後9時半の発表後にライブをやっても翌日は土曜日で日本市場は休場だから急いでも意味が薄い。そこで8日土曜朝8時からライブ配信するよ。
来週はCPI発表もあるので、こちらは当日13日夜の統計発表後にライブ配信する。

実は私は新しい事に挑戦チャレンジすることが好きなのだが、YouTubeがかくもアッサリと結果が出ると拍子抜け。1か月ほどで16500人がチャンネル登録。最終的には多分ツイッターフォロワー数と同じくらいの4万人くらいは行きそう。そしてその程度が限界と見えてくる。アイドル系とは異なり(笑)、オッサンのYouTubeはその程度。しかもグーグルがチャンネルに勝手に広告を入れてくるので「ブスッ」。収益化路線は選択していないのに。そもそもYouTubeは同じ経済関連でも、あざとい週刊誌的なノリが目立つね。これも抵抗感違和感がある。とは言え書くだけでなく肉声で話せることはコミュニケーションの見地で深みが増すことも認めざるを得ない。ややトーンダウンしつつ、まぁ当面続けてみる。嫌になったら、即やめる。

2022年