豊島逸夫の手帖

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金1800ドル割れの実相

2022年7月6日

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国際金価格が1760ドル台。総じて夏休み前の身辺整理。投機的金買いポジションの売り手仕舞い。筆者が本欄で示した予測レンジ1700~1950ドルの下限に接近。短期的には1800ドルで強い下値抵抗線と見ていたがアッサリ下放れた。売りのタイミングが想定より前倒し。相場の大崩れの可能性は低い。なぜなら米国不況入りについては市場での見解が真っ二つに割れて、方向感もバラバラだから。その典型が原油価格。一時100ドル割れた。間髪入れずシティーは年末65ドル説。対してゴールドマン・サックスは140ドル説。

総じて、商品市場は米国経済不況による需要減、そしてドル高で買いポジションの売り戻しモード。銅も安い。米国債券市場では不況の前触れとされる逆イールド(長短金利逆転現象)が再発生。名目ドル金利も10年で3%を大きく下回る。外為市場では欧州経済のスタグフレーション懸念でユーロが売られ、ドルインデックスは106で高値更新。売りの標的が円からユーロへシフト。ドル・ユーロのレートがパリティー(1対1)に接近。

背景は本欄で繰り返し書いてきた、パウエルFRB議長の対インフレ策=利上げとQTの合わせ技が効き過ぎて、米国経済が不況入りか、経済成長減速程度で収まるか、未だ読み切れないので市場は一喜一憂。

なお、金市場には不況或いは成長減速、そして金利安は買い要因なので、金売りにブレーキが組み込まれている(built-in)。

今の下げには換金売りの要素も目立つ。取りあえず現金ポジションで様子見の姿勢。暴落中の仮想通貨から金への「里帰り」も顕著。

金も下げているけど底なし沼のビットコインよりマシとの悲壮な投資家判断。

2022年