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大谷選手、大坂選手も大使役、仮想通貨破綻の実相

2022年11月10日

マネー収縮の時代を象徴するクレジットイベントだ。ゼロ金利・量的緩和全盛の時代には「過剰流動性相場」、「何でも上がる相場」と言われた。その典型が仮想通貨であった。しかしFRBのQTによりマネー収縮の時代に移行するや、それまで「カネ余り」で覆い隠されていたリスクが次々と露わになっている。バフェット氏は「マネーが引き潮になれば誰が裸で泳いでいたか分かる」と予言していた。

裸で泳いでいたことが露見した事例として、英国年金危機、クレディ・スイス財務不安によるCDS保証料率高騰、「SPACの帝王」と言われたカリスマの破綻、そして仮想通貨市場。

今回の仮想通貨破綻劇に関して、マーケット感覚で最大のリスクはトレーダーがレバレッジをかけられる取引所のシステムだ。自己資産の範囲内で売買していれば損失も自己資産損失に限定される。しかしレバレッジを使った瞬間に、1人のトレーダーの損失が売りの連鎖に波及して破綻のドミノ現象が生じる。

しかも今回破綻した仮想通貨交換業大手のFTXの投資会社であるアラメダ・リサーチ社は、FTX社が発行するトークン(電子証票)であるFTTを自社バランスシートに組み入れていた。これでは自社株を担保に銀行融資を受ける如き事象が可能になる。しかもその額が1兆円近い。

FTXと言えば一世を風靡して他の仮想通貨業者の救済役も演じてきた。仮想通貨の「白馬の騎士」とも言われ、30歳のCEOフリード氏も時代の寵児となった。ソフトバンク、ブラックロック、シンガポールの政府系ファンドのテマセク、更にカナダ・オンタリオ州年金基金にまで出資した。PR活動も活発で大谷翔平選手や大坂なおみ選手までFTXの大使役を引き受け話題になった。今やその事実が話題になっている。筆者も大ファンである大谷選手が仮想通貨業者の大使役とのニュースに接した時、マーケットのプロとしてレピュテーション(評判)リスクの危うさを直感したことが鮮明な記憶として残っている。

結局FTXのフリードCEOはライバルでもあるバイナンス社の支援を仰いだ。しかしアラメダ社が巨額のFTTをバランスシート上で保有していたことが発覚するや、バイナンス社は早々に支援を取り止めた。その瞬間から一般顧客の投資家たちによる「取り付け騒動」が勃発した。

今更のように「不透明性」が指摘される。当然SEC(米国証券取引委員会)もCFTC(米国商品先物取引委員会)も監視を強化すべく動き始めている。しかし時既に遅し。

ブロックチェーンのテクノロジーはホンモノであるが、異なるブロックチェーンでも通用するトークンは「証票」であり、クレジットリスクがあったことが盲点でもあった。トークン価格の暴落が命取りになったのだ。

9日のNY市場でも中間選挙開票速報は上の空で、専ら仮想通貨破綻劇が注目されリスクオフムードが支配した。安全資産とされる米国債や金に逃避マネーが流入する局面もあった。NY金は1700ドルの大台を維持した。

次に発覚する裸で泳いでいたスイマーは誰で何処にいるのか。銀行監督当局の管轄外であるシャドーバンクか。簿外取引で何か市場が知らない事例があるのではないか。市場の疑念は深まるばかりだ。

早速YouTube豊島逸夫チャンネルに配信して解説した。

大谷翔平、大坂なおみ選手も大使役、大手仮想通貨業者破綻の衝撃

2022年