豊島逸夫の手帖

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ウクライナ瀬戸際、久しぶり「有事の金買い」

2022年2月14日

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日本の休日2月11日のNY市場。
引け前に突然市場が動いた。
PBS(米公共放送ネットワーク)特派員がロシアのウクライナ侵攻について新たな詳細な計画ありとツイート。PBSは米国唯一の公共放送ゆえマーケットは俄然有事モードに突入。即、株は急落。金は1830ドル台から1860ドル台にまで急騰。インフレヘッジ買いだけでは突破できなかった1850ドルの強い上値抵抗線を突破した。
間髪入れずホワイトハウスが緊急記者会見。
「五輪期間中にも侵攻の可能性あり」、「48時間以内にウクライナの米国人は退避せよ」。
特に「48時間以内」という具体的指示は初めてのことなので、これで市場は有事モードに突入した。
安全資産の米国債と円も買われた。
その後12日土曜日にバイデン・プーチンの電話会談が設定。
週末の市場も緊張感が溢れた。結局両者折り合わず。有事の切迫感は強まっている。

さて、本欄読者は有事の金は長続きせず、うっかり買いを入れると梯子を外されることはご承知のはずだ。プロの発想は「有事の金は売り」。堅気の素人衆が有事の金買いに走ったところでプロは売りの洗礼を浴びせるのが常道。
但し、今回はインフレヘッジの金買いも同時進行しているので、ウクライナとインフレの合わせ技で、投機的売りの仕掛けで下がったところは買われそうだ。
結果論だがインフレ買いだけでは突破できなかった1850ドルの壁を有事の金買いのモメンタムで上抜けたと言えよう。

ところで、ウクライナ情勢は両サイドともに瀬戸際政策。偶発的衝突もあり得るが、北京五輪閉幕まではプーチン氏も遠慮するのではないか。
盟友習近平氏の面子を潰すようなことは控えると思われる。五輪後の動きは視界不良。市場は傍観するしかない。

なお、日本3連休中に発表された1月米国消費者物価指数が40年ぶりの7.5%へ上昇。しかも価格上昇がモノからサービス業へ拡大してきた。市場では3月0.5%刻みの利上げ、更に利上げ回数7回が予測される。金利を生まない金には逆風だが、インフレ拡散は順風だ。結局ドル実質金利は依然マイナス圏なので、大きく崩れる市場環境ではない。
そこにウクライナ有事が生じたというわけだ。
海外市場大波乱の日本3連休であった。
筆者は徹夜が続き、3連休どころではなかった。

2022年