豊島逸夫の手帖

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イースター明け、いきなり内外で金急騰

2022年4月18日

週明けもいきなり金が急騰。2000ドルに再び接近中だ。

日本時間18日中には米10年債利回りが2.86%にまで急上昇しているが、国際金価格も1990ドルを突破。当然円建て金価格は連日史上最高値更新だ。国内金価格上昇への寄与度は円安の方が上回る事態も出来する。
まさに金の歴史も常識も塗り替えられる日々。これまでは金利が上がれば、金利を生まない金は売りであった。逆にマイナス金利になった時は、金利を生まない金=ゼロ金利の金の方がマイナス金利よりマシとか、究極は金の方が相対的にハイイールドとさえ言われて金が買われたものだ。
それが今回はドル金利急騰局面で金がガンガン買われている。
これまでも本欄で書いてきたようにドル金利が上がっているが、対して米国の物価は年率8%以上急上昇中だ。従って実質金利は大幅なマイナスという異常事態だ。国債や預金で保有していても資産の実質価値は目減りするだけだ。
FRBはこの実質金利マイナス幅を縮小すべく動いているが、それとて政策金利(フェデラルファンド)を年末までに2%ないし3%引き上げる程度。焼石に水である。それゆえ民間のアカデミックな議論として、現時点でのFRBの利上げ計画はまだ不十分との意見も根強い。サマーズ元財務長官などはFRBに対し「何を生ぬるい事をやっているのだ」と強烈に批判している。「インフレ率が8%なら、5%くらい利上げしろ」との強硬論だ。

とは言え、ゼロ金利に慣れ切った市場の視点からは、ゼロからいきなり5%ではあまりに強烈な利上げで景気が急速に悪化(オーバーキル)してしまう。株価も暴落は必至だ。
それならば「財政政策で更なる財政支出を増やして景気を支えよ」との議論もある。
しかし、米国は今法律的に許される限界まで財政赤字を膨張させてきた。これ以上国債を発行して財政をふかせば、米ドルの信認低下に拍車がかかる。そもそも共和党が財政均衡を重視して、財政赤字には大反対ゆえ議員数が民主50対共和50と真っ二つに割れる米上院で成立するはずもない。事実バイデン看板政策を盛り込んだ200兆円相当の大型財政支出案は一人の民主党員(マンチン上院議員)の造反で宙に浮いたままだ。

このように考えてくれば、ドル実質金利がマイナスの状態は当分続くであろう。
量的緩和でばら撒かれた9兆ドルものマネーを回収するとの計画もあるが、まずはせいぜい1兆ドル程度の回収で過剰流動性は残る。カネ余り状況は容易に改善されない。

筆者が金は下がっても歴史的金高圏内に留まり底割れはないと見る所以である。下値はドル建てで1700程度か。一方ドルの下値(円高)は115円程度か。それでも昨年に比し、かなりの円安ではある。

「最近は金最高値だが下がるとすれば、どこまで下がるか」と聞かれるので、本日はその答えを記した。

さて、本日の写真は虎屋生菓子。ここまでくると芸術品で食べるのが惜しくなる、けど食べる(笑)。

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2022年