豊島逸夫の手帖

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「コモディティー投資」にはご用心

2022年6月29日

インフレの時代はモノへの投資が有利ということで、最近コモディティー投資が注目されている。

確かにこれまではコモディティーという範疇は投資の中でも別扱いされ、投資対象としては疑心暗鬼の目で見られることが多かった。
それがコロナとウクライナをキッカケに逆に持て囃されている。特に直近では、とにかく特定のモノの価格が上がるとニュースとして報道される機会も多い。
殆ど注目されなかった状態から一気に投資の世界の人気者扱いになっている。

確かにこれまではコモディティー関連の投資媒体を保有する人が少なかったゆえ、多少なりとも個人のポートフォリオに組み入れることは意味があると思う。

但し、商品価格は原油が典型だが、とにかく価格変動が激しい。
それゆえインフレだからと言って、即まとめ買いすることは薦められない。常に高値掴みのリスクがある。しかも原油と金以外の市場は規模が小さく流動性も少ない。短期間でバブル化して弾けるリスクがある。市場のインフラも未だ脆弱だ。

それゆえ金と同じく地味に積み立てることが賢明な策なのだが、実際問題として例えばアルミだとか穀物だとかを積立で投資するといっても極めて難しい。

そもそも長期投資するのであれば、長期トレンドが右肩上がりであることが前提となる。その過程で短期的価格変動が激しいから少しずつ買い増すことに意味があるのだ。
しかし産業用金属や穀物価格は中長期トレンドで上昇が見込まれるかと言えば、プロでも見通すことは困難だ。

代替策として生産会社の株を買う方法はあるが、これはこれでマネジメントスキル、即ち経営者の能力により株価が変動するケースが多い。当該商品の価格が上がっても調子に乗って子会社で異業種に手を出し、大きな損失を計上する事例はしばしば見かけるところだ。

それゆえ筆者はコモディティー投資について個人投資家から見解を聞かれると「自分のリスク耐性を考えて判断すべき」と答えている。
つまり今日買ったモノが翌日大きく値を下げ、目の前が真っ白になるような個人投資家には薦められないということだ。

しかも例えば金は腐食せず希少価値は残るが、原油は燃えれば消えるし、穀物は食されれば排泄されるだけだ。
言い方を換えれば金は役立たないが価値の保存機能には優れる。
対して原油や穀物は人間の生活必需品である。しかし価値の保存機能は無いに等しい。
それゆえ原油や穀物の値上がりは、即社会問題となり地上波でもニュースとなり政治問題化するが、金の価格上昇は所謂「値上げ問題」の対象とはならない。

結局、金は商品と通貨の二面性を持つという点に尽きる。
この基本点は忘れずに押さえておきたいところだ。

さて、昨日は久しぶりに上品な日本料理を楽しんだ。気楽に仲間と旨いモノを食する機会の有難みを強く感じる。

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2022年