豊島逸夫の手帖

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イングランド銀行ショック、金急反騰

2022年9月29日

全てはトラス英国新首相の大型減税案、突然の発表に始まる。天然ガス急騰で今冬の暖房費を国が補助する政策もある。市場では一気に英財政不安が生じ、英国債売りの嵐。ヘッジファンドも投機的売り攻勢に参入した。かくしてポンド暴落も含め「英国売り」の様相となり、イングランド銀行は危機感を強く意識するに至った。年金運用も危機的状態が想定される。

そこで突然量的緩和再開を決定。緊急時限措置とは言え市場は全く想定していなかった。QE(量的緩和)どころかイングランド銀行もFRBと同様に利上げとQT(量的引き締め)を実行するとの観測が圧倒的主流であった。そのQTは延期との発表だ。

英国債先物売りに走っていた投機家たちは完全に逆を突かれ、追加証拠金支払い(マージンコール)を突き付けられた。損切りが損切りを呼ぶ連鎖で英国債利回りは急騰。

この市場異変は直ちにNY市場に伝播。イングランド銀行はいざとなれば暫時金融緩和に切り換えた。FRBもいざ米国不況入り不可避となれば利上げとQTは一時停止となるのではないかとの楽観的発想に追い風となった。既に来年は利上げ不況で利下げ観測が(FRBは否定するが)市場では絶えなかったのだ。

市場内部要因としては折しも米10年債利回りが4%を突破して、投機的米国債売りポジションが蓄積していた。そこでイングランド銀行サプライズが格好の利益確定手仕舞いの口実を提供した感もある。同利回りは3.7%台まで短時間に急落。一日で20ベーシスポイントを超える変動は債券市場ではおおごとである。外為市場ではドルインデックスが114台から112台まで急落した。米株価は反騰を演じた。そして金利を生まない金には追い風となった。

国際金価格は1660ドル台を回復した。

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同時に市場の中央銀行への不信感も強まった。
そもそもFRBは自らインフレは一時的との痛恨の判断ミスを犯し、市場は神経質になり金利乱高下を招いたわけだ。

更に余波は日銀にも及ぶ。円買いドル売り介入中にイングランド銀行から思いもかけぬ「ドル売りの援軍」到来の様相だ。

人民元安を持て余す中国人民銀行にも暫時朗報となった。既に防衛策として人民元基準値を高めに設定してきた。銀行の外貨保有高制限や外貨取引コスト引き上げなど、あれこれ手を尽くしてきた。習近平国家主席3期目の共産党大会を控え経済波乱は許されない。

かくしてイングランド銀行ショックは世界の市場を揺らせた。
しかしFRBも日銀も金融政策の基本的スタンスをこの程度で変えることはあり得ない。

株価は弱気相場入り。外為はドル高トレンドが続くであろう。国際金価格もこの要因で本格上げ相場になるわけではない。但し円安は依然国内金価格には追い風になる。

米国の連続0.75%利上げとQTの引き締め合わせ技に世界の中央銀行が苦慮する構図は変わらない。

なお、イングランド銀行ショックについてはYouTube豊島逸夫チャンネルで朝7時に約8分バージョン、朝8時に約18分バージョンをライブ配信した。

【朝7時】 イングランド銀行ショック、世界の市場に激震、これから、どうなる?
【朝8時】 イングランド銀行ショック、実相と今後の見通し(詳細解説バージョン)

2022年