豊島逸夫の手帖

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ロシアと金

2022年6月24日

先日の日経YouTubeセミナーでも質問に出ていたが、ロシアと金についての話題が市場で語られる機会が増えた。

つまりロシア中央銀行は2298トンの金準備を保有している。経済制裁などで経済的に孤立した場合に備え、外貨準備として購入・保有してきたわけだ。それが今回はロシア中央銀行の売買まで制裁の対象にされたことで「宝の持ち腐れ」になってしまった。折角有事のために貯えて来たのに、いざその日が来ても使えないという状況は、さすがのプーチン大統領も想定外だったと思われる。

ではこの2298トンの金の活用法はないのか。様々な憶測が乱れ飛ぶ。

ロシアが金本位制に復帰するという報道もあった。しかしこれは極論で無理筋である。トンデモ本著者には格好のネタになるかもしれないが、金本位制は過去の遺物。経済の成長に見合う成長通貨を機動的に供給できない。

とは言え、プーチン大統領も経済的に追い込まれ、必死である。中国やインドなど、親ロシア国に割安で相対取引にて販売する可能性はある。しかしその場合に中国なら人民元決済を条件にされよう。インドは米国との関係も考慮せねばならず複雑な立場にある。ロシアの金の輸入までは踏み切れまい。

すべて想像の域を超えないが、2298トンの金の価値は変わらないので、今後の展開次第で思いもよらぬ使い道があるかもしれない。

因みにイランが経済制裁の抜け道として、ペルシャ湾対岸のドバイから大量の金を搬入した事例はある。日用品などの輸入の決済に金が使われたと見られている。

ロシアと金の話は今後新たな展開があるかもしれない。ロシアにとっては虎の子の金保有なのだ。

仮に2298トンの金がアウトライトで売却されれば、国際金価格の下げ材料になろう。

2022年