豊島逸夫の手帖

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質疑応答集

2022年3月31日

最近、対面も含めセミナーが再開され、いろいろ質問を受けるので代表例をまとめてみた。

金価格予測
3年後には3000ドル。長期は強気。但し今年はドル建て金価格が再び上昇するとすれば、ロシアがウクライナ戦争で核兵器使用とか、FRBがインフレ制御に失敗して、インフレ率が10%を超えてしまうとか、まず確率は低い事例になる。年末1800ドル前後か。FRBが年末までに本当に7回利上げすれば、これは金利を生まない金にはキツイ。
一方、円安は未だ進行すると見るので、円建て金価格は最高値を更新する事例が増えそう。

ドル高なのに、なぜ金高?
教科書どおりには動かないケースが増えている。外為市場ではドル需給でドル高になるが、長期的に米ドルの国際基軸通貨としての信認が低下しているので、ドルの代替通貨として金が買われやすい。ドル高でもドル不安というわけ。特に中央銀行が外貨準備として金を購入する傾向はジワリ続きそう。

金利との関係は?
ポイントは名目金利ではなく実質金利。
仮にFRBが政策金利をプラス2%にまで引き上げても、インフレ率が4%ならば実質金利はマイナス2%になる。これは金などの実物資産、コモディティーと株には追い風。債券や預金は保有しても実質価値が目減りする。
因みに日本のインフレ率は未だ0.5%。しかし米国に比し日本の経済規模が1/4程度なのに、FRBに引けを取らないほど日銀は量的緩和でマネーじゃぶじゃぶ状況を続けている。これは今後のインフレ要因。

コモディティーとしての需給は?
まず、供給面では今の高い価格圏で現物の売り戻しが世界的に急増中だ。従って需給はじゃぶじゃぶの供給過多。それでも先物主導で金価格は上がるという投機的価格上昇。
対して、需要面では歴史的高値圏で現物購入は減少。
一方、欧米市場ではドルの実質金利がマイナス圏に留まる限り、現物でも傾向としては金が買われやすい市場環境だ。この「現物」には現物の裏付けのある金ETFも含まれる。

ウクライナ戦争の影響は?
有事の金買いは長続きしない。
但し、ロシアの軍事侵攻により中国が台湾に軍事侵攻するとか、北朝鮮が日本の領土に向けてミサイルを発射するとか、日本人にとっての有事が絵空事、まさかのシナリオと切り捨てられなくなってきた。日本でも有事への備えとして長期的に金を保有することの意味が出てきたと言える。
それから、ロシア中央銀行が保有する金2000トン超は、結局経済制裁で宝の持ち腐れとなった。ロシア国内で生産される年間300トンほどの金は買い取ると発表している。その分ロシアの金準備は増えるだろう。このロシア保有金を買ってくれるとすれば中国だろうが、その場合の対価は人民元ということになろう。それでもロシアは良しとするか。なお中国の立場も微妙で、経済的に米国は重要顧客なので、米国による経済制裁をまともに破ることには慎重にならざるを得ない。特にコロナが再発して上海までロックダウンゆえ国内経済は厳しい。それから中国は人民元を国際通貨として決済に使われることを目標としているので、ロシアが人民元保有を増やしてくれる分には歓迎であろう。かくして微妙に利害関係が絡む。総じて金価格への直接的変動要因にはならないだろう。

2022年