豊島逸夫の手帖

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雇用統計の評価

2022年4月4日

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先週金曜日に発表された最新雇用統計は、概ね米国労働市場の底堅さを映す結果となった。国際金価格はKITCOグラフの赤線、緑線の如く下げている(円建て金価格は円安で下がりにくい)。

非農業部門新規雇用者数は43万人。先月、先々月分の大きな下方上方修正もなく、市場は安堵。失業率も3.8%から3.6%へ低下。
賃金も年率5.6%と増加基調続き、労働参加率も62.4%と微増。これについての評価は、感染を嫌う人たちが賃金も上がり、労働市場に戻って働く気になったとポジティブに見るか、或いはインフレが賃金上昇にも浸潤して、労働参加率の伸びも十分ではないとネガティブに見るか。意見は分かれる。

金市場では労働市場が堅調で過熱リスクが懸念されるとして、5月0.5%幅利上げの見方が更に拡散して、金利を生まない金には逆風となった。
とは言え、市場ではインフレ対応で後手に回ったパウエルFRBが利上げをやり過ぎて、不景気になるシナリオも懸念される。
その「不況の兆し」とされる現象がドル長短金利逆転現象だ。指標となる米10年債と2年債の利回り格差が、僅かながらマイナスに転じる場面が出始めたのだ。過去の事例では、この「逆イールド現象」が起きると12か月から16か月後に不況になっている。しかしタイムラグがあり、直ちに不況になる事例ではないので執行猶予付き判決とも言える。総じて株式市場はまだ深刻な話ではないと受け止めているが債券市場は警戒ムードが強い。金市場では中期的に見ればリスクオフで買われる可能性がある。
結局、パウエルFRB議長が金融引き締めで米国経済のソフトランディング(軟着陸)に成功すると信じられる人は株を買い、信じられない人はインフレを制御できず、ハートランディング(激突)となるケースに備え、ヘッジとして金の買いに回る。
かくして、金利上昇を懸念する金弱気派とインフレ悪化を懸念する金強気派に分かれ、国際金価格は1900ドル前半のレンジで推移している。中期的には名目金利上昇がインフレに追い付かなければ、実質金利マイナス幅拡大の状況で、金は2000ドルに向かうシナリオと名目金利上昇ペースが早過ぎて、実質金利マイナス幅が縮小して1800ドルに下がるシナリオに分かれているのだ。

さて、今日から東京証券取引所が大幅に模様替えするが、これで「外国人マネーが日本株取引の約7割を占める」という歪んだ構図は変わらない。模様替えではなく、どれだけ日本人がマーケットでリスクを取れるか。海千山千の外国人投資家軍団と対峙するリスク耐性が問われている。日本人の多くは今日買った株が値下がりすると目の前が真っ白になる初心者タイプだ。これは民族的DNAとも言える。東証が発表する日本株売買統計を見ても、毎回まず外国人の買いで上がり、その後に日本人の買いが続き、そこで外国人側が売りに回り、結局日本人側は高値掴みする傾向が顕著だ。だからこそ地味に買い増す資産運用が日本人には合っているわけだ。がっつり投資は所謂「つわもの」タイプ向き。日本株市場も連日プロとプロの「空中戦」が繰り広げられている。特に株式市場の知識も経験も豊富ではない堅気の素人衆は株式積立投資に徹するべきだ。

2022年