2022年7月22日
今週ウォール街で話題となり、多くの欧米メディアが断片的に引用したのがバンク・オブ・アメリカ(BOA)の最新機関投資家サーベイだ。特に「株への運用配分がリーマン以来最低の水準」との一節が見出しとなった。
市場に悲観的なレポートはあまた出回るが「恐ろしいほどの(dire)リスク許容度の低さ」、「市場は全面降伏(capitulation)」など、独自の表現がおどろおどろしい。更にこのレポートはリバースインディケーター(反面教師)の異名を持つ。今回も「ブルベア指数でベアがマックス(最大)」とまで書かれると、市場は「いよいよ底入れ近しか」と解釈するのだ。レポート発行側もそれを意識してか、「私はとても弱気だから強気だ(I am so bearish,I am bullish)」と開き直ったかのようなタイトルを付けた。
それほどに悲観的になる理由として、同調査では「執拗なインフレ」が33%、「世界的不況」が24%、「中央銀行のタカ派傾向」が17%、「流動性不足などシステミックな信用リスク」が10%を挙げている。米国のレポートゆえウクライナ関連は7%、コロナ再発懸念は4%と相対的に低い。
今、最も混み合っているトレードとしては米ドル買いが41%、コモディティー買いが23%、ESG関連資産が12%、現金が6%、米国債売りが6%とされる。これらをリバースインディケーターと見れば、ドル高・商品高はそろそろ一巡ということになる。
そもそも米国市場のファンドマネージャーたちをかくも悲観的にさせている背景には、今後更にFRBが年内1.5%以上は利上げするという見解と「市場ムードがスタグフレーション的」という理由が挙げられている。
調査期間は7月8日から15日。6月FOMCでそれまでの「0.75%利上げは議論のテーブルに上がっていない」との見解が、あっさりちゃぶ台返しされたことのショックが明らかに尾を引いている。市場のスローガンも「FRBには逆らうな」から「FRBを疑え」に急転換した。
筆者の実感としては今のNY市場は「悲観」というより「無気力」なムードが目立つ。ヘッジファンド特有の「落ちるナイフも敢えて掴むアニマルスピリッツ」が感じられない。去勢された市場の如き様相だ。ダウが500以上急騰しても急落しても取引量は増えず、徹底した傍観の姿勢だ。海千山千のファンドマネージャーたちとZoomで意見を交わしていても、言い訳がましい説明や自嘲気味の呟きが印象として残る。筆者が円安に話題を向けても「安い日本にリベンジ旅行したいと家族に迫られている」などとかわされてしまう。
顧客としての個人投資家たちも、運用を任せたプロたちが敢えて現金ポジションを増やしても、特に声を荒げて批判するわけでもなく、不満だが渋々現状を受け入れる姿勢が多い。
それゆえプロも焦らず、じっくり7月FOMCを待ち受ける。前回の苦い経験から全ては箱を開けてみないと分からないと割り切っている。更に金融政策効果発揮にはタイムラグがあるので、7月FOMCでも「8~9月のデータ次第」とかわされる可能性がある。ECBと日銀の動きも重要視されるので、8月25~27日に開催されるジャクソンホール中央銀行フォーラムは例年以上に注目される。
かくして未曽有の待機資金がマグマの如く沈殿しており、ひとたび市場の視界不良が解消されれば、中間選挙も視野に秋の大相場になりそうな予感が漂っている。
さて、金市場関連では本日(22日)の日経新聞朝刊「グローバル市場面」に「金下落、物価の天井想定、中印の需要停滞も影響」と題する大ぶりの記事が載っている。要熟読。