豊島逸夫の手帖

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パウエル氏とFTX社CEO会見を繋ぐ時代の糸

2022年12月1日

日本時間今朝3時台からパウエルFRB議長の講演と質疑応答。
更に同7時台からFTX社CEOサム・バンクマン・フリード氏(SBF氏)のリモート会見があった。

前者は市場がいいとこ取りで金高、株高要因になった、後者はあまりにお粗末で幼稚な発言のオンパレードであった。

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まず、パウエル氏講演はこの2週間ほどFRB高官発言が相次ぎ、FOMC内の微妙な亀裂が露わになる中、来週から12月FOMC前のブラックアウト期間に入るというタイミングで開催された。

市場は、パウエル氏が次のFOMCでの利上げ幅減速を明示したことがヘッドラインとして流れ、久しく聞くことがなかった「ハト派的発言」を「熱烈歓迎」した。

しかし、前後の文脈は11月FOMC時の発言と全く変わっていない。何としてもインフレ抑制をやり遂げるとの決意表明。金融政策にはラグがあり、その効果点検のため利上げペースを落とす。重要なのは利上げの速度ではなく、到達点の金利水準の高さと高金利水準をどこまで継続するかである。

労働市場の過熱感も変わらない。雇用統計の新規雇用者増加数を見れば、今年1~7月の平均は45万人、8~10月の平均は29万人。この数字は望ましいと思われる10万人を遥かに上回っている。

以上の文脈の中から「利上げ幅の縮小」だけが市場を独り歩きしたわけだ。いいとこ取りの危うさが漂う。今週発表の雇用統計で早速市場の解釈が試されよう。

次に、今や市場の注目度がパウエル氏を上回るほどのSBF氏初のリモート会見。

最初から同氏の目線は落ち着かず、発言ぶりもしどろもどろであった。「顧客資産が分別管理されていたのか」との重要な部分も逃げ腰が目立ち、どう見ても説明責任を果たすとは言い難い。FTX社とアラメダ社の関係についても「アラメダ社は任せていた」の一点張り。アラメダ社幹部と同居していたことを突かれても「ごめんなさい、私の不徳の致すところ、申し訳ない。」と謝罪の言葉ばかりだ。あまりのレベルの低さにただただあきれ果てるばかり。

問題はこのような人物をシンガポール政府系ファンドのテマセク、カナダ・オンタリオ州年金基金、ソフトバンクなどが信用して出資していた事実であろう。騙す方も悪いが騙される方も何ともバツが悪かろう。

量的緩和とゼロ金利の超金融緩和を引き継ぎ実行役となったパウエル氏。その政策下、カネ余りだが運用難という状況で運用実績を強いられた人たちの実態。ひとつの時代の後始末を象徴するふたつの会見であった。

2022年