豊島逸夫の手帖

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1回の雇用統計やCPIで米金融政策は変わらない

2022年11月7日

11月FOMCでパウエルFRB議長は「利上げの速度は慎重に、利上げの終着点は高めに、利上げの期間は長めに」とのメッセージを発した。具体的には12月利上げ幅は0.75%以下に減速の可能性を示唆したものの、終着点は9月予測時より高く、利上げの期間は2023年にかけてこれまでの想定より長期化する可能性に言及した。

この新基本方針は1回や2回の経済統計の振れで変わるものではないことはパウエル氏が常々強調している。単月で大きく振れても「ノイズ(雑音)」と切り捨て、少なくとも数か月のトレンドで判断する姿勢だ。

しかし市場は短期投機筋が多いので、月次の動きに反応してボラティリティーが高まる傾向が顕著だ。経済統計の解釈も彼らのポジションに都合の良い後講釈がまかり通る。

例えば10月雇用統計に関しても新規雇用者数は増えたものの、失業率は悪化して強弱混じる結果となった。しかし市場は弱い解釈を選択した。債券市場では更なる金利上昇傾向を見込み、米国債売りポジションが膨らみ、外為市場ではドル買いポジションが累積していた。しかし中間選挙とCPIを次週に控え、取りあえず利益確定のためにポジションを巻き戻して、身辺整理の上で次週を迎えたいとのトレーダー心理が優先した。結果はドル金利安、ドル安、株高となった。そこでNY金はKITCOグラフ赤線に見られるように大きく反騰した。

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なお、FRB高官発言もいいとこ取りで利用された。
リッチモンド地区連銀バーキン総裁は「ブレーキをかけて方向性を変える時は用心深くなるものだ。私ならそうする。」と語ったことが12月FOMC利上げ0.75%から0.5%へ減速と解釈された。「利上げ期間は長くなり、潜在的に終着点もより高くなる。」との一節は無視された。

ボストン地区連銀コリンズ総裁の発言も「先走りせず、利上げペースをやや遅くすることは理にかなっている。」と語った部分が市場を独り歩きした。「フォーカスを利上げの速度から、どこまで金利を高くするかに移す時だ。」との件は注目されなかった。

今週のCPIも上下に振れる可能性はあるが、それで新金融政策の基本路線が変わるはずもない。

なお筆者の実感だが、雇用コスト指数と求人件数がパウエル発言で引用される傾向があるので要注意だ。
雇用コスト指数は雇用統計に比し先行指標であり、その水準が年率5%で高止まりしている(今や絶滅危惧種に近いFRB内のハト派から見れば5%の水準で頭打ち傾向とも読める)。
求人件数は1000万人の大台でやはり高止まりしている。ここが少なくも800万人程度に下回る月が3回程度続かないとパウエル金融政策は変わらないであろう。

今週発表のCPIは年率8%の水準で下落しても、やはり高止まり傾向は変わらず、6~7%台が3か月程度続かないとインフレ鎮静化の兆しとは言えないと思われる。
但し短期筋は月次の変動に一喜一憂する。この傾向は変わらない。
外電などの報道の見出しに「急上昇」、「急落」などの見出しが躍ればアルゴ系は自動的に反応する。「ヘッドライン相場」と揶揄される所以だ。一般投資家はじっくり見極めることが肝要である。
金1600ドル台は底値圏との筆者の見解は変わらない。たまたま先週金曜日はNY金が反騰したが、重要な点はトレンドとして底値圏は固まりつつあることだ。最近の米経済指標で「利上げ不況」の兆しも顕著だ。中国のロックダウンも3月に緩和との根拠のない楽観説が株式市場では流れるが、これから厳しい冬季に入りウイルスも再活性化する。既にロックダウン地域は拡大。2億人以上(!)が隔離されているとされる。米中同時不況の可能性が高い。そうなると2023年のどこかの時期でFRBの金融政策も金利下落に動くであろう。そこが金利急騰の呪縛から解放される金の安全資産としての出番だ。
NY市場でも久しぶりに金が底打ち、上昇する転換点を探る見解が出始めた。

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それからFOMCと雇用統計をYouTubeライブ配信。雇用統計直後はドル高、ドル金利高に振れていた。その後急速にドル安に転じたのだ。ライブでやると臨場感は出るが瞬間的相場変動に限定されるというのが筆者の教訓として残った。

11月FOMC パウエル氏のトラウマ、ドル金利6%も

最後に先週金曜の雇用統計前に酉の市に行ってきたよ。今年は三の酉まである年。先日行った鹿島神社のお祭りといい久しぶりの凄い人波。神社の本殿にお参りする人は長蛇の列であったが、肝心のお馴染み酉の市の縁起物(熊手)の売れ行きは今イチみたい。飲食店オーナーなどが買うのだが、未だコロナの傷も残り買うだけの余力が戻っていないね。逆に鹿島神社のお祭りでは本殿前はガラガラでお参りする人は少ないが数百円単位の夜店は長蛇の列であった。みんな久しぶりのお祭りで盛り上がっているのだよね~。でも足元の現実は未だ厳しい。

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2022年