豊島逸夫の手帖

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ロシア金大量売却の可能性

2022年2月24日

1990年代初頭にソ連崩壊後、ロシア連邦の中央銀行が金の大量売却に走り、金価格が当時の安値圏である350ドル近傍まで暴落したことがある。金需給統計を見ても1992年、1993年の公的部門金売却量が年間400~600トンと突出している。未だ年間生産量が2000トン台であった頃ゆえインパクトは大きかった。その当時はソ連としてもロシアとしても公的金保有量など全く発表していなかったが、金市場では推定として大量売却量が年間400トンペースなどとの数字が流れた。一連の金売却により、市場ではソ連の公的金保有量が推定2000トン程度から、空っぽになったとも言われたものだ。当時は「トイレットペーパーを買う資金調達のため金大量売却」とも語られた。「有事のために貯えた金を売って凌ぐ」という金保有の有難みを覚えたロシアは、その後原油価格上昇にも助けられ、経済が改善するや公的金準備を再び買い増し、いざという時のための備えを強化した。公的金準備も今やIMFを通じて公開しているが2000トンを超えた。そこに起こったウクライナ問題。金融制裁で最悪ドルの決済圏から締め出される危機が迫ってきた。今こそ外貨準備の金を売却して外貨調達する行動に出ても全く不思議はない。既にユーロと金を組み合わせて決済手段に使うのではないかとの観測も出始めた。筆者は人民元と金の組み合わせが現実的と考えている。ウクライナ問題に対する中国の姿勢は、台湾の主権は絶対に譲らないとの中国側の基本姿勢に鑑み、ロシアのウクライナ主権侵害支持には消極的だ。とは言え親米とも思われたくない。複雑な立場に立たされ「台湾はウクライナではない」と訳の分からない声明で乗り切る構えだ。但し人民元をIMFに第5の国際通貨として認知してもらい、今後も国家戦略としてデジタル化した人民元を国際決済通貨として世界に広げたい野心がある。そこを読んだロシアは中国より経済規模が遥かに劣ることもあり、この際人民元をサポートして米ドルの世界的通貨覇権に挑戦する戦略に切り換えた。既にロシア中央銀行は金購入から人民元購入にシフトしている。

かくしてウクライナ問題を機に通貨ブロック化が進行しそうだ。

コロンビア大学マンデル教授が提唱してノーベル賞受賞の選考理由にも挙げられた「最適通貨圏」構想が現実味を帯びる。「無国籍通貨」、「発行元がなくソブリンリスクのない通貨」としての金も新興国が既に外貨準備としての組み入れを増やす傾向にある。最適通貨圏構想にある「中東地域の最適決済通貨は金」との発想も今や絵空事ではない。米ドル決済圏から外されるリスクに晒されるロシアがユーロ・人民元・金の非米ドル資産を増やす可能性も高まる。この通貨戦争の戦力分布では米ドルの一極集中是正、欧州通貨・人民元・金の連合軍という構図がひとつの可能性として想定される。そこで円の立ち位置はどうなるのか?アジアの「地域決済通貨」は人民元か円か?日本にとっても厳しく自国通貨の実力が問われ吟味、選択されることになろう。

なお、今朝の読売新聞朝刊に寄稿している。

さて、久しぶりにマガーリ@自由が丘に行ってきたよ。現在は一日一組に制限しているけど、そろそろ徐々に解除も考えねばね。大粒の牡蠣のパスタと山菜(ふきのとう)のリゾット。いよいよ大好きな山菜の季節か~。ふきのとうの苦みはチーズ味との相性が抜群。シェフのたかさんやマダムと談笑しながら、外は寒く相場は大荒れの日であったけど、ほっこりしたひと時だったよ~。

と書いている内に、ロシア軍事侵攻の報道で1920ドルに急騰中。
今週が有事の金高騰のピークだろうね。

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2022年