豊島逸夫の手帖

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円建て金価格に関する誤解

2022年11月21日

セミナーで参加者からの質問に答えていると円建て金価格に関して誤解があることが気になる。

素朴な発想としては、円建て金価格が上がっているのは日本での金需要が増えているから。逆に下がっている時は日本での買いが引っ込んでいるから。このように考える人が少なくない。
しかし、実態は円建て金価格が史上最高値を付けるなどで急騰している時、日本国内では保有していた金を売る傾向の方が強い。安く買った人が利益確定売りに走るわけだ。
逆に急落すると日本国内では値ごろ感から金の買いが増える。所謂押し目買いだ。
結局、円建て金価格は国内の金需給を反映した数字ではない。
残念ながら日本国内の金需要が国際金価格に影響を与えるほどの規模ではないのだ。

そもそも円建て金価格はNYやロンドンの金市場で売買されるドル建て金価格を同時点のドル円相場で円換算した数字である。
言ってみればNY金と円相場の変数ふたつから成る連立方程式から導かれるわけだ。
それゆえ、この金のコラムでも為替要因が頻繁に出てくるのだ。
特に今回の円安局面では円安の進行速度の方が圧倒的に強い価格形成要因となった。
来年も基本的に円相場は従来の100円とか110円の円高基調には戻らないと筆者は見ている。2023年後半に米国利上げ不況が本格化して、FRBが一転金融政策の舵取りを引き締めから緩和に転換すれば、120円程度の円高に振れる局面もあるかとは思う。

とは言え、120円と言えば従来であればかなりの円安水準だ。市場がリスクオフになり不安感が充満すると安全通貨として円が買われるという「円高神話」は既に崩壊した。
より現実的には来年末に130円程度の円安の可能性は高いと思う。しかしその過程ではまだまだ150円を超える円安局面もあり得る。全ては今後の米国経済指標の出方次第だ。

なお、円相場を「鳥の目」で俯瞰すれば、日本の稼ぐ力は少子高齢化とともに長期的に衰退するので、10年後には160円が主流になっても驚かない。外国人投資家による円の見切り売りという怖いシナリオだ。それゆえ筆者はドル預金も長期的に保有しているわけだ。

一方、NY金は今年弱気であった筆者も強気に見ており、来年はNY金高と円安のスピード調整が拮抗する可能性も高い。その場合はNY金高と円高で円建て金価格は膠着する。「膠着」という表現を聞くと投機家は「つまらない相場」だと言うが、長期投資家或いは実需家には安定的に推移する円建て金価格は望ましい現象と言えよう〔まぁその時はこのコラムでグルメ関連のコンテンツが急増すると思われるが(笑)〕。

今日の写真は会津の「みしらず柿」。江戸時代に会津特産のこの柿を会津藩主が将軍に献上したところ「未だかかる美味なる柿を知らず」と称賛されたことに拠るらしい。実は渋柿なのだがジックリ渋抜きして旨味を引き出すので味がまろやかで深い。

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それから家族ぐるみの長年の付き合いである尾河眞樹君(ソニーフィナンシャル)と雑誌で為替対談をやった。結論は見出しを見てのとおり。

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2022年