豊島逸夫の手帖

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NY株暴落、時代の変遷を映す現象

2022年5月19日

昨晩のNY株式市場はダウ1164ドル暴落。更にナスダックの下げがきつい。

さすがに「ツワモノ」を自認する米国人投資家たちも顔色が青ざめている。これまでの例ではダウが日中1000ドル以上急落しても引けにかけて買い戻され、500~600ドル程度の下げで終わったものだ。しかし昨晩は1100ドル超の下げの後のリバウンドがなく、結局安値圏のまま引けた。

まともなファンドは現金保有を増やし様子見に徹している。
今株式市場を荒らしているのは小者のファンドばかりだ。
それゆえ筆者は今のNY株式相場をまともに受け止めていない。今晩もNY市場は追わず、今日から始まる全米プロゴルフ選手権(男子)の中継でも見るつもりだ。

結局過剰流動性(カネ余り)時代から流動性圧縮時代への移行期なのだ。カネ余り時代にもてはやされたビットコインが高値の半値以下に暴落したことが象徴的だ。多くの投資家が未だに過剰流動性時代の「何でも上がる相場」気分から抜け切れず、「夢をもう一度」追いかけている。

NY金は1805~1825ドルのレンジで推移している(KITCOグラフ赤線参照)。

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長期で見れば歴史的高値圏である1800ドル台を維持していると受け止めている。2000ドル台の記憶が未だに鮮明に残るので、市場では特に短期筋が「金が下がった」と大騒ぎしている。通信社が伝える場況も短期の価格変動ばかり。価格が動かねば干上がってしまうからだ。

さて、今日は財務省OBの後輩が「これから金の時代です。日本の財政は破綻します。」と言ってきた。特にトンデモ本に洗脳されたわけではなく、日本の財政の実相を知り尽くしている立場ゆえ、悲観論に走っているのだ。「資産の半分は金で持ちたい」と言うので、「せいぜい3割程度にしておけ」と抑えておいた。金というのは好き嫌いが極端だ。金に惚れ込むと所謂gold bug(金の虫)になり、金にのめり込む。逆に金嫌いの人はわけもなく「金などまともな資産ではない」と切り捨てる。金の輝きが人間の理性を狂わせるのか。こちらが冷静に説いても好き嫌いの感情はなかなか変わらないものだ。件の財務省OBも多分私のアドバイスは聞かずに財産の半分以上を金で持つであろう。

2022年