2022年5月18日
最近のパウエル語録でウォール街の話題になっている単語が「ソフティッシュランディング softish landing」。機体が揺れるソフトランディング(軟着陸)という意味が込められている。
17日の米経済紙主催イベントでは「失業率多少の上昇」を引き締めが誘発する「痛み」の事例として挙げていた。労働市場は強いのでその程度の揺れなら軟着陸との判断のようだ。求人件数が1100万人を超える人手不足を労働市場逼迫の理由として挙げている。
着陸時の金利水準に関しては中立金利を上回る可能性も示唆した。
既に市場は年内の政策金利3%近くを覚悟している。
3月と5月で既に計0.75%実施済、6、7、9月と連続0.5%利上げ、11、12月は0.25%との読みだ。なお5、6、7月の連続0.5%利上げ後に政策効果を点検の上で必要とあれば、9月利上げを0.75%とする可能性ありとのシナリオもある。そこで年末の金利予測レンジは2.75~3%となる。これは金への逆風として意識され、国際金価格は1800ドル台でリバウンドしていたが、結局売りに晒された。
かなりの急速利上げゆえ、やはり景気後退を誘発するシナリオも気になるところだ。
17日には4月小売売上高も発表され、前月比0.9%と堅調であった。とは言え消費者のバランスシートにおける累積債務も懸念される。これも着陸時の大揺れ要因となりかねない。これは潜在的に金には追い風の要因となろう。
利上げ政策効果の点検も難しい。パウエル氏は金融政策を刃物に例え「切れは鈍い」と認め、「精密な外科手術のようには行かない」と語っている。それでも急速利上げという荒療治を「ためらわない」と強い意志を表明した。これは金には下げ要因となる。
なお、0.75%利上げの可能性については5月FOMC後の記者会見で「議論のテーブル上にはない」としたが、クリーブランド連銀メスター総裁(タカ派)は日本経済新聞とのインタビューで0.75%の可能性を排除していない。ところがそもそも0.75%案を言い出した張本人のセントルイス連銀ブラード総裁(タカ派の急先鋒)は17日の講演で「より強いドラマチックな動きはあるか」との問いに対して、「0.75%」には言及しなかったことが注目された。FOMC内での亀裂も透ける。
更に、イエレン財務長官が4月18日に「物価と雇用の両方を満たすことは不可能に近い組み合わせだ。手腕と幸運が必要だ。」と述べたことが未だに話題として残っている。17日のブラード総裁は「リスクマネジメントの備えがあれば、運は付いてくる」と語り、「私は運頼みにはしない」と語っていた。
従ってFRB高官発言に一喜一憂してボラティリティーが激しくなる傾向が続いている。
かくして、視界不良の4-6月期はFRB高官発言に一喜一憂の状態が続いている。
さて、筆者の身近でもコロナウイルス感染者が後を絶たない。リモートのパネルディスカッションで講師陣6名の内2名が感染者という事例もあった。主催者側のスタッフにも感染拡大。相次ぐ感染事例に慣れてしまっている。症状も軽いので「うちは一家4名、全員感染だったよ」というようなあっけらかんトークに驚かなくなっている。経済再開の割り切りの難しさを実感している。自分が感染して、人に移すという事態だけは絶対に避けたいと強く思うところだ。