2022年6月1日
昨日はバイデン大統領、イエレン財務長官(前FRB議長)とパウエル現FRB議長の三者がホワイトハウスで対談した。議題はインフレ対策。インフレが国民経済の大問題となり、バイデン大統領の支持率にも下押し圧力をかけている。そこで極めて異例なことだがこの三者が相談することになった。FRBは政治的に独立しているはずだがバイデン大統領も黙っている余裕がなくなったと見える。トランプ前大統領ほどではないが、FRBに政治的プレッシャーをかけると理解されても反論はできまい。そもそもパウエル議長二期目はバイデン氏の指名による。
とは言え、バイデン大統領も「インフレ退治に徹せよ」と言い切れない理由もある。そもそもコロナ救済、経済再開のために財政面で大盤振る舞いしたことが過度な需要を生み、インフレの一因になったからだ。しかもインフレ退治のための金融政策は利上げと量的引き締めという国民に痛みを課す手段だ。選挙受けするはずもない。引き締め過ぎれば景気後退となり、選挙敗北は決定的になる。
中間選挙を控え、経済的にはバイデン陣営も追い詰められているのだ。ほくそ笑むのは2024年大統領選を視野に行動しているトランプ氏か。
結局、この三者会談はインフレ問題の難しさを浮き彫りにすることになった。
なお、これとは別にイエレン氏がCNNのインタビューで「私はインフレを甘く見て判断を誤った。」と、これまた異例の懺悔とも言える発言。既にパウエル氏は早々に「インフレは一過性」と痛恨の判断ミスを犯したことを認めている。前FRB議長のイエレン氏も「私だって間違えた。」と語ることにより、パウエル氏に助け舟を出したとも読める。
しかも、今回のインフレは需要過多と供給障害の二面性を持つ新型インフレだ。金融政策で過度な需要を抑え込むことはできても、コロナによるサプライチェーン破断などは金融政策でコントロールできない。
バイデン氏もホットな景気を冷やすためには「雇用統計で新規雇用者が50万人に増えるより、15万人程度に抑えられる方が望ましい。」と苦肉の発言を行っている。米国は500万人以上の人手不足なので、新規雇用は増えるより減る方が人手不足による賃金コスト上昇を抑え込めるというわけだ。
なお、NY金価格は急落して1830ドル台(KITCOグラフ緑線参照)。
これはドル金利上昇による。基本的には債券市場のポジション調整だが原油急騰が要因になっている。インフレ退治のためには強過ぎても大幅利上げは強行の姿勢と市場が解釈した面もある。引き続きインフレ懸念(上げ要因)と金利上昇(下げ要因)の綱引き状態。