豊島逸夫の手帖

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ロシア産金禁輸の実効性を問う、中国・インド抜け穴の可能性

2022年6月28日

経済制裁としてロシア産金禁輸が発動される成り行きだが、その実効性には疑問符が付く。金消費大国第一位の中国と第二位のインドが親ロシア国という需要構図になっているからだ。

ロシアの金生産量は年間330トン。対して中国とインドの二か国の年間需要は通常1500トンを超える規模だ。年間世界金生産量の5割前後をこの二か国が買い受けてきた。中国は世界最大の金生産国(年間332トン)だが、国内需要を満たすためには不足分を輸入に依存せねばならない。現状では中国もインドも主としてロンドン金市場、一部はチューリッヒ金市場から輸入している。その一部をロシアからの輸入に切り替えることは充分に可能である。

更に、ロシア中央銀行は2298トンの金塊を外貨準備として保有する。旧ソ連崩壊時にロシアは大量の公的金準備を欧米市場で売却して外貨を調達した歴史がある。それゆえ原油高で国庫が潤沢になるや、次の有事に備えて粛々と公的金購入を続けてきたのだ。ところが今回の経済制裁がロシア中央銀行にまで及び、2298トンの金売却の道が塞がれてしまった。公的金準備は「宝の持ち腐れ」になった。これはプーチン大統領にとっても想定外のことであったと見られる。そこで中国がその一部を買い受ける可能性が浮上している。中国は民間だけではなく、中国人民銀行も外貨準備として無国籍通貨の金保有を増やしてきた。ロシアからの直接金購入の対価は人民元で支払われるかもしれない。国際決済通貨としての人民元の通貨圏を拡大することは中国の通貨戦略でもある。その過程では米ドル一極通貨覇権に中国・ロシア共同作戦で対抗する思惑も透ける。ロシア中央銀行は人民元保有を11%に増やし、中ロ共同作戦をアピールしている。

なお、インドは親ロだが米国との関係も重視する立場だ。あからさまにロシア産金を大量輸入することは控えるのではないか。但し武器をロシアから輸入してきた経緯もあり、ウクライナ情勢次第では限定的ながらロシア産金を買い受ける可能性もあろう。

加えて、中東も文化的に金選好度が高く、ロシア産金を輸入する事例が出来しても不思議はない。

添付写真はデリー金宝飾店舗にて。女性店員とツーショットで鼻の下長くしているところ(笑)。

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2022年