豊島逸夫の手帖

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開き直ったかパウエル氏、FRB経済予測は「眉唾」

2022年7月28日

注目の7月FOMC後、パウエル議長の記者会見。

利上げペース鈍化の可能性に言及。金市場と株式市場には安堵感。外為市場はややドル安で反応した。この記者会見はNY市場大引け前に開催されるので、本日のNY市場で更に材料の消化が進むと、また異なった反応になることが珍しくない。まずは第一波と見ておいた方が良かろう。

筆者が驚いたのは、パウエル議長があっさり「今後フォワードガイダンスを控える。」と明言したことだ。
今回の利上げサイクルの最終的落としどころ、即ちターミナルレートについての質問に答える過程でのコメントだ。

そもそも視界不良ゆえ、四半期ごとに発表されるFRB経済レポートも「鵜呑みにしない方が良かろう(a grain of salt)」とも述べた。結局お馴染みの「会合ごとに決める(meeting by meeting)」との見解を繰り返した。

「利上げペース鈍化の可能性」への言及を歓迎した株式市場だが、FRB経済レポートを「眉唾」とのニュアンスの表現で語られると唖然とするばかりだ。

FOMC後の記者会見出席者常連の米国CNBCスティーブ・リースマン氏は、自らのツイッターで「パウエル議長のドアがバタンと閉められる音を聞いた思いだ。FRBが今後予想される米国経済鈍化、更にはリセッションへの対応について語ることを完全に拒否した。」と発言して怒りをぶつけた。

さて、利上げペース鈍化は2023年に金融緩和への政策転換の予告とも読める。やはり7月FOMCは前座だったようだ。そうすると9月FOMCではより具体的シナリオが語られるのか。最近のパウエル議長の戦術では、まずマーケットの織り込みを待ち、それを追認する形で自らの見解を述べる事例が目立つ。市場もパウエル議長を誘うように前のめりに動きがちだ。焦れる市場と時が熟するのを待つFRBの違いが鮮明である。

2022年